「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{127}西村 多久磨, 櫻井 茂男, (2013)

動機付けスタイルと学業成績・学業コンピテンス等の関係を調査したもの。

 

公立中学校2校のn=442(男性214名)対象。学習動機付け、学業コンピテンス、メタ認知方略、学業不安、無気力、学業ストレス経験、学業成績(期末テスト5教科)を尋ねた。

結果。まずOITの4つの調整スタイルの差分を。学業成績やメタ認知方略の使用は同一化的>内的>取入れ的の順番に正の有意な相関であり、外的は負の有意な相関を示した(メタ認知は有意ではなかった)。しかし学業コンピテンスは内的>同一化的>取り入れ的の順番に正の有意な相関を示し、外的は負に有意な相関を示した。また学業不安や学業ストレスは取入れ的・同一化的ともに有意な正の相関を示したが、内的は有意でない相関と負の有意な相関を示した。

調整のz得点を用いたk-means法によるクラスタ分析の結果、すべての動機得点が低い低動機付け群(18.1%)、すべての動機得点が高い高動機付け群(28.7%)、内的と同一化的の得点が高い自律的動機付け群(25.4%)、取入れ的と外的の得点が高い統制的動機付け群(27.4%)、の4つが抽出された。学業成績は自律的動機付け群が一番高く、高動機付け群と有意な差はない。学業コンピテンスは自律的動機付け群と高動機付け群が高い。学業不安や学業ストレスについては、高動機付け群のほうが自律的動機付け群より高い。

同一化的調整・高動機付け群が学業において有意であること{121}{123}、高動機付け群が自律的動機付け群に比べ不安が高いこと{77}は、他の研究でも見られる傾向である。

このことから、学業成績の獲得において単純に有意なのは同一化的だが、心理的側面において有意なのは内的であることが示唆された。同一化的調整は学業成績の重要性を理解し内包はしているが、あくまでも学業成績の獲得という外的因果であり相対的な側面も持つ評価に添って行動しているため、競争などのストレス要因を抱える。内的調整はより内発的なもの、例えば知的好奇心に則った探究活動を目的としており、学業成績は二の次のように思える。学業に励んでいるため自然と成績は高くなるが、学業成績を目的に定めてないため同一化的の人々にどこか劣るところが見え、また彼らが抱える学業不安が少ない傾向にある。

 

 

参考文献

西村 多久磨, 櫻井 茂男, 中学生における自律的学習動機づけと学業適応との関連, 心理学研究, 2013, 84 巻, 4 号, p. 365-375, 公開日 2013/12/25, Online ISSN 1884-1082, Print ISSN 0021-5236, https://doi.org/10.4992/jjpsy.84.365, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/84/4/84_365/_article/-char/ja,