「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{57}Zsolt Demetrovics et al. (2011)

オンラインゲームの動機付けの基盤となる構成要素(動機)を明らかにする。また、特定の動機を測定できる尺度の開発。

n=3818を用いて確証的因子分析。最終的には7因子・27項目から構成される質問票が完成した。

第一因子、逃避、現実からの逃避を動機とする。

第二因子、対処、現実にて遭遇した不快感や攻撃性の解消、気晴らしを動機とする。

第三因子、空想、ゲーム内世界への没入、非現実的な体験を動機とする。

第四因子、スキル開発、集中力やプレイスキルなど熟達を動機とする。

第五因子、レクリエーション、和気あいあいと楽しむ、一線を引いた娯楽として扱うことを動機とする。

第六因子、競争、他者との競い合い、打ち負かす達成感を動機とする。

第七因子、社会的側面、人と知り合うことの喜びを動機とする。

 

逃避とレクリエーション・スキル開発・競争は相関低い。競争はレクリエーションと相関低い。レクリエーションとスキル開発は若干の相関有。逃避・対処・空想はそれぞれ相関強い。

動機の平均点、採用される動機の順について。上から、レクリエーション、社会的側面、対処、競争、空想、技能開発、逃避。

 

今回作成された質問票はゲームジャンルを絞らずに作成したため、大体のオンラインゲームユーザーに適応できる。

今回の調査の限り、逃避を動機とする傾向は一番弱かった。「ゲームに呑まれて暴力的に」という主張はいまもなお蔓延るが、現実はゲームを一線を引いた娯楽として扱うユーザーが優勢である。それに、逃避の動機が危ういのであれば、まずその動機を抱える対象に直接対処する必要がある。ゲームと暴力性の相関を計った研究は数多いが、その因果関係はあまり話題に挙がらない。ゲームが危険と主張したいのであれば、ゲームによって危険性が表出するという因果を示してほしい。

特定の動機と性格特性との関連、病的傾向との関連、プレイ時間、動機が選択される背景(代替欲求としての選択との関係)、動機の遷移など。こういった指標は結構使える。あとオンライン/オフライン傾向、オンラインで展開されているゲームにおいてオンラインを活用している(マルチプレイなど)割合との関係。ゲームジャンルの選好。

 

 

参考文献

Zsolt Demetrovics, Róbert Urbán, Katalin Nagygyörgy, Judit Farkas, Dalma Zilahy, Barbara Mervó, Antónia Reindl, Csilla Ágoston, Andrea Kertész & Eszter Harmath. Why do you play? The development of the motives for online gaming questionnaire (MOGQ). Behavior Research Methods volume 43, pages814–825 (2011)