「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{56}Bakkes, S.; Tan, C.T.; Pisan, Y. (2012)

Personalized Gamingと呼称される、ゲーム側がプレイヤーの特性に応じてその内容を逐次変化させる使用について、その概要と動機、またゲームのどの部分にこの仕様を適応させるかについて議論している。

著者は、この仕様によりプレイヤーの性格や特性などを考慮したゲーム環境を提供でき、プレイヤーの満足度や生産性の向上に貢献するとしている。

 

→プレイヤーの入力に基づいたゲーム側によるゲームの調整は、プレイヤーのゲームを調整したいとする意思決定を介さないゲームの変容を意味すると推測。

また、入力による適応は、その加減次第ではあらぬ変容を引き起こしプレイヤーの動機を無視する可能性がある。プレイヤーの入力ではなく、プレイヤーの入力の動機を探れるパスを設けられればある程度は改善できそうである。

プレイヤーのプレイングを参照して、難易度を自動的に調整する機能も考えているという。プレイヤーの成長や学習を加味した提供がなされなければ、かえってつまらなくなる可能性が出てくる。またこれは論文内でも言及されているが、該当難易度に見合った調整が行えるかが問題となる。

今回の提唱では、ストーリー方面の改良も視野に入れているとのこと。事前に選択肢を設け選択により変動するのではなく、より広範の入力からストーリーを逐一生成すると主張している。論文でも言及されているが、この場合、ストーリーとの一貫性の保持が危うくなる。デスストランディングのようなメッセージ性の強いゲームではこの方策は使用できないだろう。またプレイヤーによっては自身の選択によるストーリーの極端な変動を嫌う人もいる(Dave Westwood et al. 2010 のタイプAなど)。

個人的な感想としては、こういった要素はあってもいいと思うが、その発揮の有無をプレイヤーが選択できるように意思決定を1つかませるのが最適だろう。プレイヤーの入力の動機を考慮したささやかな補正(星のカービィの照準機能など)は問題ないが、プレイに直接関与してくる要素が、プレイヤーの意思決定を介さずに変更されるという仕様は、余計なお世話ととらえられる可能性が高い。

 

 

参考文献

Bakkes, S.; Tan, C.T.; Pisan, Y. (2012) Personalised gaming. Amsterdam Machine Learning lab (IVI, FNWI)