「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{141}Jansz, J., Avis, C., & Vosmeer, M. (2010)

Sims2のプレイ動機・プレイヤーの性差に焦点を当て調査したもの。

 

イントロにて社会的役割理論を背景にゲームプレイヤーの性差の偏りについて喋っている。ゲームがステレオタイプな男性観によりすぎている等々。ただプレイヤーの性差については他でも語られていた{135}{132}ので、いずれはこれが主題になるのも予測できた。男女のプレイ動機の差や、プレイ人口の差。これを見極めるために今回はSims2に限定して調査するという。

手続き。オンラインアンケート、オランダのSims2公式サイトにて広告掲載。Sims2プレイヤーであることを条件にサンプリング、n=760を得た。人口統計学的要素、選好ゲーム、週当たりのプレイ時間、独自の動機付け尺度を回答してもらう。独自の動機付け尺度は空想・社会的側面・対処・コントロール(値を弄り、操作する快感)・挑戦・レクリエーションの6要素27の尺度からなる。

結果。参加者の大半は女性であり(84%)、年齢が高くなるにつれ女性の割合が増えてくる、人口統計学的要素は操作1つで結構簡単に揺らぐ。Sims2に費やされた時間は平均週11時間であり、ここに男女差は見られなかった。Sims2を独占的にプレイしている10%に目を向けると、男性約18時間、女性約14時間と有意な差が発生する。

動機付けについて。レクリエーションがぶっちぎり1位であり、2位がコントロール、同着3位が空想・挑戦・対処、4位が社会的側面である。レクリエーション・コントロールに性による有意差はなく、空想・挑戦・対処・社会的側面動機は性別や年齢による影響を受けた。

 

以上より、男女がゲームに熱中する要因に一般的な特性が見られた。{57}で見られたように、レクリエーション動機が人口の多くを占めており、またコントロール動機という有能感・自律性充足を匂わせる動機にも性差はなかった。

また、男性のほうが社会的側面を動機にすることが多く、社会的役割理論で説かれていることと反した事が確認された。

ゲームプレイによる性差は、少なくともプレイ動機にはなさそう。離脱理由{132}や継続期間のほうがよりよく表している可能性がある。

 

 

参考文献

Jansz, J., Avis, C., & Vosmeer, M. (2010). Playing The Sims2: an exploration of gender differences in players’ motivations and patterns of play. New Media & Society, 12(2), 235–251. https://doi.org/10.1177/1461444809342267