「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{200}Khe Foon Hew, et al. 2020

Massive open online courses(MOOCs)の質を顧客満足度から計る試み。

 

MOOCsはオープンなオンラインコースのこと。今までMOOCsは修了者の成績や離脱率からその質が図られてきたが、この計り方は「好成績さえ記録すれば」というハイステークステストと同じ思想が蔓延するきっかけになり、より自律的な学習を目指すこのシステムには合わない。そもそもMOOCsは達成を課すものではないことから、この計り方は不適当である。

であれば、参加者の満足度やその満足度がどう揺らぐかが、コースの質の計り方となる。なお調査はムーアの取引距離理論(Moore 1991)を基盤にしたが、調査時にこれを押し付けることはしなかった。

 

class-central.comからコースを集計。249個のコースとこれに関連する6393名の学習者に関する情報を入手。

従属変数は学習者回答のコース満足度、最大星5つ。

独立変数は学習者のレベル(Xiong et al. 2015)とコースレベル、学習者レベルは6つの構成要素(コース構成・ビデオ・講師・コンテンツとリリース・相互作用・評価形態)に対する参加者の感情と作業不可の報告、コースレベルはスケジュール・コース長・コース期間・週当たり投資時間を。

学生がコメントした具体的なMOOCsの側面を掘り出すため、機械学習自然言語処理の技法を使用。

あとなんか質的情報をすげぇこねくり回している。

 

結果。コース修了者>コース履修者>コース離脱者の順に満足度が高かった。満足度と終了率に高い相関があるため、MOOCコースを修了するためにはまず参加者の満足度を上げる必要が示唆された

3つの要因が生徒の満足度と有意に相関した。

まず評価形態(これはテストや課題の形式のことを指す)。明確な指示・指摘が伴う技能評価であること、重要な概念への理解度を問うなど授業に有意に関連する技能評価を用いる、学習した概念を応用した行為や一般化を題材とした技能評価が好ましい。また、単に生徒の時間をつぶすような作業的課題、暗記確認のためのテスト、混乱した説明は避けるべきである。

次に講師特性。教科について豊富な知識があり、学習者を置いてけぼりにしない内容で伝える、熱意を示す、授業時にユーモアを示す、などの特性は生徒を引き付ける。特に強化に精通していること、教科内容を細かく明確に伝えられることはそのまま強みとなる。また、スライドを読み上げるだけの授業、繰り返しの多い内容、ほとんど微笑むことがない、授業に関係ない情報を提示する、カメラ目線ではない、などの特性は生徒の離脱を招く。

3つ目はコース内容、授業で提示された内容である。コースの構成は有意な関係を持たず、内容が興味深いものであると生徒は惹かれるらしい。で、この内容も単なる伝達ではなく、実生活に結び付けた内容であること、最新の情報、関連事項の記載があることが好ましい。

ビデオ教材そのものは有意に関係せず、ビデオ教材の中でどう教員が振舞うのか、どのような内容が展開されるのかが重要になる。

ビデオ教材の再生時間は通常短く、4~19分ぐらい。MITでの大規模研究では6分未満が好ましいとされている(Guo et al. 2014)が、まだ情報不足が目立つ。

相互作用は特に影響を与えなかった。これはMOOCsのディスカッションフォーラムのデザインが不十分であることなどが理由としてあげられる。どうもフォーラムは数千人の学習者の投稿により情報過多状態であり、またインセンティブが不足してることも重なり、有意に働かないという。

コーススケジュールが有意な関係を示した。あらかじめ作られた日程に従うより、自身で時間割を決められるコースのほうが満足度が上がる傾向にあった。これは学習者の大半が成人期に達していることが挙げられる、忙しいもの、余裕があるときに詰め込みたいわ。

週当たりの投資時間や授業時間と満足度は有意に関係しない。多すぎると負荷高すぎてパンクする、なんて傾向もなく。見たいところ聞きたいところだけを抽出するために利用しているためこうなっていると推測される。

 

 

参考文献

Khe Foon Hew, Xiang Hu, Chen Qiao, Ying Tang. What predicts student satisfaction with MOOCs: A gradient boosting trees supervised machine learning and sentiment analysis approach.  Computers & Education, Volume 145, 2020, 103724, ISSN 0360-1315, https://doi.org/10.1016/j.compedu.2019.103724. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0360131519302775)