「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{199}Ferrer J, et al. 2022

オンライン学習環境における関与と態度の関係について調査したもの。

 

オーストラリアの高等教育機関対象、有効回答574件(女性59.4%)。

Vallerand et al. (1992)の学習意欲尺度、知るための内発的動機・達成するための内発的動機・外発的動機・非動機の4つ。エンゲージメントはKrause et al. (2005)、学業従事・知的関与・オンラインのエンゲージメントを測定。Attitude to Online Learning Scaleを作成、学生の態度を計測、オンライン学習の技術的側面に対する感情(認知)・オンライン学習における強化の受け取りよう(感情)・オンライン学習の使用意図(行動)に分ける。

 

結果。モデルを以下。

知識獲得への意欲は直接的に、またオンライン学習への態度を介して間接的に、エンゲージメントに正の関係を持つ。直接的なパスは、知的関与と学業従事がより強く示した。

達成への意欲は知的関与と学業従事に正のパスを持つが、決して強くない。また態度を介した間接的な効果は有意ではなかった。学習そのものではなく学習した成果を求めて勉学している傾向があるため、学習に対する感情や態度が有意にかかわらないのだろうか。

外発的動機付けは知的関与に直接だが弱い関係を持つ。また態度を介した正の弱い関係も持つ。

非意欲は知的関与とオンライン学習従事に負の関係を持ち、特に知的関与に大きなハンデを追う。また態度を介した間接的な影響に負の影響を与えている。負の感情が行動に与える影響は大きく[197]、特にオンライン学習者にとって、学習行為に否定的・非関与的な環境は離脱の要因となりかねない。

態度を介した影響はすべて正の関係だが、特にオンライン学習従事に正のパスを持つ。

 

ただし、これは態度や関与のみを切り取ったもの。最終的には成績にて一様に判断される。成績であれば、感情を無視した詰め込みや絶対に点が獲得できる仕組みによってごまかせる。学習への態度は生涯において確実にかかわってくるが、たった数年の短期的な場面においては深刻化・表面化する前に評価が終わり、学生ではなくなってしまう。

学習への態度、そこからの関与のパス、あるいは動機づけからの直接的なパスは、生涯の有様にかかわる。しかし、そこまで庇いきれないのが現状である。

 

 

参考文献

Ferrer, J., Ringer, A., Saville, K. et al. Students’ motivation and engagement in higher education: the importance of attitude to online learning. High Educ 83, 317–338 (2022). https://doi-org.libproxy.ouj.ac.jp/10.1007/s10734-020-00657-5