「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{107}Gedera, D., Williams, J., Wright, N. (2015)

オンライン学習のエンゲージメントを高める要素が何かを特定したい実験。

 

ニュージーランドの大学の学位取得講座、12週間。n=7。個別インタビュー、学習活動の観察、アンケート、文書分析を用いた。Adobe Connectと学習管理システムMoodleで構成。活動理論(Engestron 1987)の枠組みを使用。

学生に個人課題とその発表の機会を提供、10週目に行われた。発表直後にリアルタイムでの口頭の議論ができる環境。これは発表後に励ましの言葉を送れる環境でもあったし、実際に交わされた。いくつかのコミュニティスペースが設けられ、私的な会話から質疑応答まで対応できた。議論やスペースで投げかけた言葉が仲間に貢献していると知ったとき、強い動機付けを経験したと語る。教員による議論・コミュニティへの積極的参加は学生との相互作用的な効果を介し、エンゲージメントを増加させていた。

「学生はインターフェースと格闘したり、学習できるようなリソースを見つけたりする必要はなかった」洗練されたUIについて、教員の一言。

 

授業に関わっている仲間との建設的な関りが、活動への強い動機付けとなる。今回の研究の一番の焦点はここだろう。SDT[76]の関係性の欲求を重視した内容であり、関係性動機付け理論と一致する内容だ。

仲間からの反応がリアルタイムで返ってくるのは関係性充足として特に強い動機付けを発生させる、その内容が情報的またはポジティブなものであれば尚だ。また対話の機会を提供することで、互いを知り、より深い問答からくる動機付けが獲得できる可能性が増える。教員がこのコミュニティに積極的に参加していたのも良い、この試みが支配的なものでないという暗示でもある。

この研究の内容を関係性動機付け理論っぽいと思った最大の理由は、励ましによる両者の動機付けへの貢献が語られたから。励ましの言葉は励まされた人の動機に繋がり、その言葉が動機の獲得につながったことを知ったとき、励ました人は「励ました」事実に効力感を感じ、これもまた動機付けに繋がる。この一連のやり取りが発生したことをきちんと取り上げたことは、この研究が関係性重視であることを暗に示しているようだ。

UIについての言及は分量自体は多くなかったが、重要なこと。[103]でも説かれているが、使いやすいUIは目的達成のために支払うコストを軽減させる。操作がもたつかない、どこになにがあるかぱっと見でわかるというのは、直接的な効力をもたらすわけではない[105]が、動機付け支援の底上げとして機能する[102][101]。

 

 

参考文献

Gedera, D., Williams, J., Wright, N. (2015). Identifying Factors Influencing Students’ Motivation and Engagement in Online Courses. In: Koh, C. (eds) Motivation, Leadership and Curriculum design. Springer, Singapore.