「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{197}Skinner, et al. 2008

小学生から中学生にかけての勉学への意欲低下の原因を特定するための縦断的分析。

 

4年生195名、5年生131名、6年生290名、7年生189名の計805名。計測点は秋と春。

行動的・感情的関与はSkinner et al., 1990, 1998; Wellborn, 1991、有能感は Skinner,
Chapman, & Baltes, 1983, 1988; Skinner et al., 1990、自律性はRyan & Connell, 1989、関係性はFurrer & Skinner, 2003、教員のサポートはSkinner & Belmont, 1993(関与・構造・自律支援について)。

 

結果。まず年齢による点数の差分。中学生の移行期から関与の点数が低く、不適応の点数が上昇していることが示された。また自律性と関係性、また生徒が知覚する教員のサポートが減少している傾向も見られた。

次に関与/不適応と他の関与/不適応との関係性を計る。感情的関与と感情的不適応はそれぞれ行動的関与/不適応に影響を与えている。関与は行動的関与に正の影響を、不適応は行動の不適応に正の影響を与えている。また行動的不適応は感情の不適応に正の影響を与えている。

次に欲求充足との関係。3つの欲求充足は関与に正の相関、不適応に負の相関。また生徒側が報告した教員のサポートと関与・不適応は有意に相関。

以下は欲求充足と教員のサポートが与える影響である。前提として、秋の関与/不関与は春の関与/不関与に正の影響を与える(状態を引き継ぐ)。

行動的関与について、特に自律性の充足が大きな影響を与えた。

これは感情的関与においても同等の傾向が見られた。

生徒が報告した教員のサポートは特に行動的関与において影響を与えた。

 

まず、行動は感情を介する。つまり感情的関与/不関与が行動的関与/不関与に影響を与えることが示唆された。退屈感などは子の粘り強さに下方修正を与える。感情的関与が与える行動への影響はかなり大きく、教員は対象の感情を無視することはできないだろう。

欲求充足については、特に自律性充足が貢献した。大学生を対象とした研究では、構造→有能感充足→各関与への相関がみられたが[196]、今回は値はそこまで強くはないものの、有能感は不安の主要な予測因子であった。有能感が低い対象は不安の増加を理由に行動的不関与を示した。つまり自己顕示欲→感情的関与/不関与のパスが見られた。

 

 

参考文献

Skinner, E., Furrer, C., Marchand, G., & Kindermann, T. (2008). Engagement and disaffection in the classroom: Part of a larger motivational dynamic? Journal of Educational Psychology, 100(4), 765–781. https://doi.org/10.1037/a0012840