「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{193}馬場, 菅原 2000

女性の瘦せ願望についての調査。

 

方法。500名の女子大学生(平均19.64歳)対象。BMI、瘦身願望尺度をあらたに11項目作成、体系に関するメリット・デメリット感、ダイエット経験、食行動尺度(今田 1993)、公的自意識・私的自意識(Feingstein, Scheier, Buss 1975)、賞賛獲得欲求・拒否回避欲求(菅原 1986)、性役割の受容(伊藤 1978)、自尊感情(山本ら 1982)、日常感情尺度(山本ら 1997)、成熟拒否(Welch, Hall, Walkey 1988)。

 

結果。瘦身願望尺度の主成分分析にて第一主成分が63.62%と第二種成分の8%を大きく上回っている。負荷量はすべて0.7越え、α係数は0.94。問題なし。

痩身願望得点の高い人は比較的ダイエット経験が多く、また継続的なダイエットを行っている傾向も強かった(25.5%)。ダイエット経験のある人が特に試したことがあるのは絶食や痩せる薬などであり、次点で下剤やたばこなどである。健康的なダイエット法である運動やカロリー計算は含まれない。

これはおそらく「痩身を得るための行動」という外発的動機付けの構造が関係している。運動やカロリー計算が目的ではなく、痩せることが目的であり、それは単なる手段。しかもそれが「痩せている自分イケてる」などの外的因果にゆだねた外的調整ともなると、継続かつ辛い行為ではなく、すぐに結果が手に入れられるようなものに走るのも納得できる。行動自体には全く価値を見出せない、動機を見出せないとき、それをわざわざすることはしない。ただその先にある結果だけを得たい。この浅ましさがある種危険行為につながる。そしてこれが危険行為であることに気づけない、なぜなら調べる動機が獲得されていないから。うーん、愚か。

痩身願望が形成されるパスは以下。

経路は主に3つ。

身体的な肥満から直接痩身願望につながるケース。シンプルに健康上の問題意識からダイエット等に挑む。高動機づけスタイルの同一化的調整に当たるか。

自己顕示欲求から発生するもの。痩せていることが女性としての価値、自身の価値を高めるものとして知覚される傾向が強く、ここにBMIが加わることで「痩せればワンちゃん」と考えるようになる。外的調整寄りと推測、評価基準が完全に対外であり外的因果に身をゆだねることになる。

自己不全感から発生するもの自尊感情が低く空虚感が漂う日々の中にBMIが加わることで、「この体系だからいけない、変わらなければ」と、今の体形でいることのデメリット感が痩せた時のメリット感に変わり、動機として成立するというもの。高動機スタイルの取入れ的調整が強いか。自尊が弱く、自分に対し圧をかける様からこのように推測。

→まず自己顕示からくるものはほぼ長続きしないだろう、彼らは結果だけを欲している。自己不全感は使命感こそあれど自尊感情が弱い、習慣を続ける上でのミスに厳しく攻め、萎える可能性もある。あまり交じりのないBMIからの直接パスが一番長続きする傾向にあると思われる、目的がはっきりとしていて、それが重要であると自身が自覚しているからだと推測。

3動機の移行がどのようなものか。つまり時間経過による動機感移行。おそらく動機づけスタイルのように、すべての変数はもとから存在しており、社会的要因・個人的要因によりいづれかの変数が強くなり、主傾向が変化する、といったものだと推測。

 

 

参考文献

馬場 安希, 菅原 健介, 女子青年における痩身願望についての研究, 教育心理学研究, 2000, 48 巻, 3 号, p. 267-274, 2013/02/19, Online ISSN 2186-3075, Print ISSN 0021-5015, https://doi.org/10.5926/jjep1953.48.3_267, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/48/3/48_267/_article/-char/ja,