{192}上地・宮下 2008
過敏性自己愛傾向と対人恐怖傾向の関連の傾向を調査したもの。
研究1。自己愛的脆弱性尺度NVSの短縮版の開発。大学生460名(男性191名)対象に短縮版提供。別の大学生87名(男性29名)対象にNVSと短縮版の相関を計る。別の大学生216名(男性97名)対象に短縮NVSと中山・中谷(2006), GHQ精神健康調査短縮版の関係を計る。
結果、4因子が出現した。
自己顕示に恥が伴いやすく不自然にこれを抑制する「自己顕示抑制」、
不安や抑うつを自分で調節する力が弱く他者にその緩和を期待する「自己緩和不全」、
他者に自分への特別扱いや特別の配慮を求める「潜在的特権意識」、
他者からの承認や賞賛に過敏でこれが得られないと萎えてしまう「承認・賞賛過敏性」。
原版と短縮版の相関は高い。中山・中谷(2006)の評価過敏性と誇大性との関係は以下。
評価過敏性はすべての因子が正に相関。誇大性(自己愛傾向)は自己顕示抑制と承認・賞賛過敏性に負の相関、潜在的特権意識に正の相関。
また低い相関ではあるが、自己愛的脆弱性が高いほど、うつ症状が現れることが示唆された。
研究2。NVS短縮版を用いて、自己愛的脆弱性・理想自己-現実自己の不一致-自尊感情-対人恐怖傾向の関連を検討。大学生249名(男性91名)対象。理想自己-現実自己の測定に小平(2002)、自尊感情はRosenberg (1965)の日本語版、対人恐怖傾向は清水・川邊・海塚(2006)。
結果。相関とモデルを以下。
自己不一致は自己顕示抑制と正の相関、承認・賞賛過敏性と弱い正の相関。自分らしい顕示的・主張的自己の抑圧は強い自意識や低い自己評価をもたらす、少なからず現実との乖離が生じる(Kohut 1971)とされる。「自分が信じたい物語と現実の業績との乖離」のような、実存的にはポジティブなこともネガティブに転換してしまう。厄介な。
自尊感情は自己顕示抑制、承認・賞賛過敏性、自己不一致と負の相関。他者の評価を優先したり、理想と現実の乖離が激しいなど、自分を素直に肯定できないときは自身を尊ぶ姿勢がなくなるのは必然。
対人恐怖傾向は自己顕示抑制、潜在的特権意識、承認・賞賛過敏性、自己不一致と正の相関。また自尊感情と負の相関。潜在的特権意識が高いと他者の反応を過剰に求め、他者からの拒否に強いショックを受け、これが対人不安につながるとされる。
自己緩和不全は自己不一致、自尊感情、対人恐怖傾向と有意な相関なし。ただし他の3因子とは有意な正の相関を持つ。
参考文献
上地 雄一郎, 宮下 一博, 対人恐怖傾向の要因としての自己愛的脆弱性,自己不一致,自尊感情の関連性, パーソナリティ研究, 2008, 17 巻, 3 号, p. 280-291, 2009/07/04, Online ISSN 1349-6174, Print ISSN 1348-8406, https://doi.org/10.2132/personality.17.280, https://www.jstage.jst.go.jp/article/personality/17/3/17_3_280/_article/-char/ja,