「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{123}新垣 紀子. 都築 幸恵., (2016)

大学生の動機付けスタイルと生活状況・職業価値観などの関係を調査したもの。

 

Vansteenkiste, et al., (2009) で問われた動機付けプロフィールを日本の大学生に適応、実態を調査したもの。概念としては動機付けスタイル[77]とほぼ同じ。

都内私立大学n=212(男性60名, 平均20.65歳)対象。Academic Motivation Scale (AMS; Ratelle et al., 2007)に9項目を加えたもの、人生満足度尺度、勉強や課外活動などの状況、職業価値観尺度を調査。

結果。7因子が抽出。「なんのために大学に来ているのかが分からない」とする『無気力』、アモチベーションに該当。「将来良い生活をしたいから」とする『外的報酬』、外的調整に該当。「自分が勉強においても成功できることを証明したいから」とする『自己証明』、取入れ的調整に該当。「大学での教育が仕事での能力を高めると思うから」とする『実社会への準備』、同一化的調整に該当。「新しい事柄を学んでいると喜びや満足を感じるから」とする『知的好奇心』、内的調整に該当。「学生生活をエンジョイしたいから」とする『青春謳歌。「周りの殆どの友達が大学に行くから」とする『追従』

クラスター分析による大学生の分類を試みた結果、4つのクラスターが抽出された。『無気力』が低く他の6つの因子が高いオールラウンド適応型、50.52%が該当。『知的好奇心』が高く他の6つの因子が低い知的好奇心型、20.10%が該当。『無気力』『外的報酬』『自己証明』『追従』が高い世間体系・主体性欠如型、14.94%が該当。『無気力』が高く他の6つの因子が低い不適応型、12.89%が該当。

高校・大学における成績はオールラウンド適応型が最も高いと報告。一週間当たりのサークルの平均活動時間はオールラウンド適応型、知的好奇心型の順に高い。人生満足度はオールラウンド適応型、知的好奇心型と続いた。

職業価値観について、自身の能力を活かしたいとする傾向は知的好奇心型に強く見られ、他人から高い評価を受けたいという傾向はオールラウンド適応型と世間体系・主体性欠如型に強く見られた。

 

クラスターの傾向は[77]と同様であり、オールラウンド適応型は高動機付けスタイル、知的好奇心型は自律スタイル、世間体系・主体性欠如型が取り入れ・外的スタイル、不適応型が低動機付けスタイル、に該当すると思われる。またクラスターの人口傾向は[77]と同様、複数の動機付けが混在しているオールラウンド適応型が一番多い

高校・大学の成績もオールラウンド適応型に属している人が最も高いと報告したが、これは同一化的調整が学業成績を予測するとした[121]の主張と一致する。

人生満足度や学業の傾向については、選好研究であるRatelle et al. (2007)やVansteenkiste, et al. (2009)の主張と食い違う点が見られる。2つは知的好奇心型のほうが大学生活や学業において適応的とし、統制が絡む{77}オールラウンド適応型は比較的不利としているが、今回はオールラウンド適応型が一番有利であると報告された。これはサンプルの文化圏によるところが大きいと推測、2つは欧米で行われ、今回は日本で行われている。個人的には、学校化が進む日本の大学では多少の統制を許容できるオールラウンド適応型が適応的であると推測。

 

 

参考文献

新垣 紀子. 都築 幸恵., 大学生の動機づけパターンが生活スタイル・満足度・職業価値観に与える影響 (杉山武彦教授退任記念号), 成城大学社会イノベーション研究, 18806414, 成城大学社会イノベーション学会, 2016-03, 11, 1, 159-178    https://cir.nii.ac.jp/crid/1050282677558859392