「ゲーム心理学」知見保管庫

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{194}清水, 海塚, 2002

健常な青年における対人恐怖心性と自己愛傾向のサブタイプについて調査したもの。

 

対人恐怖心性尺度(堀井・小川 1997)、自己愛人格目録短縮版(小塩 1998c)。大学生・大学院生計336名(平均19.7歳)対象。尺度の信頼性については問題なし。また性別や年齢による差異は見られなかった。

また対人恐怖心性を、自分を統制できないことや生きることにつかれているなどの対自的不安意識、集団に溶け込めないや社会場面で当惑するなどの対他的不安意識の2つに区別。

 

結果。2つの尺度間のスコアに弱い負の相関がみられたが、参考程度に。

4つのクラスターを抽出。また4つのクラスターを独立、不安意識と対人恐怖申請尺度を従属とした重回帰分析

2つの不安意識が高く自己愛傾向が弱い1群。

対自的不安意識と自己愛傾向が強く対他的が弱い2群。

対他的が強く対自的と自己愛傾向が弱い3群。

自己愛傾向が高く2つの不安意識が弱い4群。

対人恐怖心性と自己愛傾向の組み合わせには複数あることを念頭に置いて、クラスタ分析。結果、4つのタイプを得た。

今更だが前提。恥に対する敏感さ→対人恐怖心性。自己顕示欲の強さ→自己愛傾向。

1群は純粋な対人恐怖であり、右下に該当する。他者が怖く、なじめるかどうかが不安であり、接することができない。また人から賞賛を得たいという欲求が低く、これが対人恐怖を助長させると考えられる、この欲求の低さは自己肯定感の低さからくるものとされる。

2群は特に対自的不安意識と自己愛傾向が高く、右上の「過敏型」に相当する。自身の尊厳を保てるか、自分が優位であれるかが不安であり、過敏になる。自意識過剰。

3群は「?」に属する。まだ言語化されていない。一応、対他的な不安のみが強調されているため、「ふれあい恐怖的心性(岡田 1993)」と仮称。浅い付き合いはできても深い付き合いにには困難をきたすものが多く、また自身の内面に目を向け内省する機会を避けるという傾向があるという。

4群は「無関心型」に該当する。褒められることに抵抗はなく、むしろ褒められることにより対人恐怖を低減させるため、もっと褒めてと要求したり自分から行動したりしてこれを獲得しようとする。ただし完全に対人不安がないというわけではない。

 

これさ、もし個人が何らかの要因でクラスターを移動するとしたら、その原因はいったい何だろうか、という方向性で考えると面白そうじゃない? この場合。クラスター間の相関がまず最初の考察材料になりそう。

また、1群と3群は2群と4群に比べて重回帰分析の説明率が低い。これは自己愛傾向の影響を受けて説明できる対人恐怖心性が「過敏型」と「無関心型」である、と解釈できる。

 

 

参考文献

清水 健司, 海塚 敏郎, 青年期における対人恐怖心性と自己愛傾向の関連, 教育心理学研究, 2002, 50 巻, 1 号, p. 54-64, 公開日 2013/02/19, Online ISSN 2186-3075, Print ISSN 0021-5015, https://doi.org/10.5926/jjep1953.50.1_54, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/50/1/50_54/_article/-char/ja,