「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{182}Krieglstein, et al. 2022

認知負荷理論を理論的背景にした4つの主観的認知負荷測定に対してメタ分析を行ったもの。

 

Eysink et al. (2009)、Klepsch et al. (2017)、Leppink et al. (2013; 2014)の4つを対象。この4つの指標のうちいづれかを用いた研究が対象となった。実験研究・マルチメディア学習設定された・英語の論文・ICL,ECL,GCL,事前知識などの要素に言及されている・データが収集できるなどの条件を設け、最終的に53件がレビュー対象となった。

 

結果。内部一貫性について。ICLとGCLの値が高い傾向にあった。参照する限り、Leppink et al.(2014)の認知負荷質問票は良好な値を示している。

追加変数が指標の信頼性を脅かすかについて。学習者の年齢と学歴、教材の領域、教材の形態などは有意な差をもたらさなかった。リッカート尺度のスケールポイントのみ有意に影響し、スケールポイントが大きいほど信頼性が高い傾向にあった。

 

構成概念妥当性。調査した質問票の認知負荷タイプの相関を考慮することで妥当性を評価した。p<.001を取り上げた場合。Leppink et al. (2013; 2014)、Klepsch et al. (2017)はICL-ECL間に正の相関。Eysink et al. (2009)はすべての概念が正の相関を持った。

 

基準妥当性について。retentionは学習内容の保持、transferは学習内容の長期記憶への移行を指す。p<.001に限る。

Leppink et al. (2013)はGCLと記憶保持・記憶定着に正の相関がみられた。GCLは事前知識と相関がなく、ICLは事前知識と負の相関。

Klepsch et al. (2017)。ICL,ECLと記憶保持が負の相関、GCLが正の相関。ECLと記憶定着が負の相関、GCLと正の相関。

Leppink et al. (2014)。用いた研究数が少なく、考察に限界がある。

Eysink et al. (2009)。すべての認知負荷項目は記憶保持と負の相関。GCLと記憶定着は正の相関。

 

Klepsch et al. (2017)とLeppink et al. (2013; 2014)については十分な内部一貫性が示された。

すべての指標においてICLとECLに正の相関がみられた。学習のために必要な要素と、学習の妨害として働く要素は、学習者によって完全に分離されているわけではないことが示唆された。

深い学習は妨害要素により阻まれる。ECLとGCLの負の相関と、記憶保持・定着との正の相関から、GCLについては比較的的を射ていると言えるかもだが、Eysink et al. (2009)の結果もあるため、この結論は限定的である。

基準妥当性については、一般にCLTの理論的前提を支持するが、ICLとECLにおいては疑問が残る。

事前知識とICLは負の相関を示した。ECLも同様の傾向にある。これは事前知識により知識の抽出方法が異なったため、教材の状態などに揺られず学習したためと考えられる。

 

尺度の具体的な呼称、回答選択肢の数、尺度の信頼性の正しい表記。

 

 

参考文献

Krieglstein, F., Beege, M., Rey, G. D., Ginns, P., Krell, M., & Schneider, S. (2022). A systematic meta-analysis of the reliability and validity of subjective cognitive load questionnaires in experimental multimedia learning research. Educational Psychology Review, 34(4), 2485–2541. https://doi.org/10.1007/s10648-022-09683-4