「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{178}Heo and Toomey 2020

マルチメディアラーニングの効力の性差に関して実験したもの。

 

ワーキングメモリ(KInshuk 2015)。

空間把握能力がマルチメディア学習において優位に立てる能力であることは周知Hegarty, M., Narayanan, N. H., & Freitas, P. (2002).、また空間把握能力が男性優位であることもある程度知られている。が、真に性差について言及した研究は少ない。空間把握能力を制御したうえで性差が現れるかを計る。

 

手続き。独立変数は性別×静的/動的メディア資源、共変量は空間把握能力。米国北東部の中規模大学学部生245名(女性193名)対象。幅広い空間把握能力をもつ学生を募集する要綱で、宣伝。

タンク式トイレの構造(Hoffler, Koc-Januchta, and Leutner 2017) と自動車ブレーキの構造 (Mayer & Fiorella, 2014) という2つの課題を用意、それぞれが静的・動的課題が作られた。統制のため、事前知識について質問した。空間把握能力の測定にはFrench, Ekstrom, and Price (1963)の紙折りテストを採用した。

学内のチラシで利用できるURL等を用いて自発的に研究に参加、非実験的環境にて実行。ギフトカードの報酬あり。

 

結果。空間能力を共変量とした性別の主効果は有意な小さい値を示した。共変量による効果量は大きかった。空間能力を統制したうえで性別による主効果は確認された。両学習課題とも、男性優位であった。

空間能力を共変量としたテストタイプの主効果は有意で大きな値を示した。また、テストタイプと性別の交互作用効果についての証拠も提示された。

学習の継続は両課題とも有意に高かった。学習成果の低下傾向について、男性のブレーキ構造課題参加者では有意に少なかった(つまり有意に維持された)。

マルチメディア研究における空間把握能力の影響が大きいことが示唆され、他の研究もこれに影響されている可能性がある。また、その空間把握能力をコントロールしたうえで、一定量の性差が確認された。無視できない社会文化的規範による影響。

非実験的環境による統制できない変数の可能性・性別と学術専攻の効力へ配慮していない・裕福な大学生というサンプルの偏り、が限界事項。

 

 

参考文献

{178}Heo, M., & Toomey, N. (2020). Learning with multimedia: The effects of gender, type of multimedia learning resources, and spatial ability. Computers & Education, 146, Article 103747. https://doi.org/10.1016/j.compedu.2019.103747