「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{179}Mayer 2014

マルチメディアラーニングに関する概論。

 

Mayer and Morero (2003)は、意味のある学習をその教材に対する深い理解として定義している。深い理解をする、つまり充分に言語化することで教材の重要な側面を抽出し、既知と結び付け、知識として統合できる。マルチメディアラーニングの課題は、意味のある学習を阻害しないために、認知的過負荷を引き起こさないような教材デザインを組み、実践するかにある。

メモリは有限で、しかもメモリはタスクごとに割り当てられているから、複数のメモリをまんべんなく使ったほうが過負荷起こさずに済むよね、ということを前提としたお話。

 

認知負荷理論CLTに則ると、認知負荷には3種類ある。正しく教材を理解するために発生するもの(Intrinsic cognitive load)、邪魔な刺激を取り除くために生じるもの(Extraneous cognitive load)、理解したものを処理するために生じるもの(Germane cognitive load)。

 

マルチメディアデザインの12の原則(Mayer 2009)。

・マルチメディア原理。言葉のみを用いた教材よりも、言葉と絵を用いた教材のほうが効果的である。細かく言えば、複数のチャンネルに負荷を分散させた教材のほうが有利である。

・空間的連続性。同じ説明を行う要素同士は近くに置かれている状況がいい。探すのは大変だからね。

・時間的連続性。説明は時系列が連続するように提示する。直前・直後の因果関係や相互作用がわかるように、時間の進行を無視したような提示はしないように。

・コピーレンス。説明しているもの以外の要素は入れない。余計な茶番も、イースターエッグもいらない、それは外発負荷を発生させるためである。

・モダリティ原理。ハイパーメディアを用いた時の優位性について解説している。

・冗長性。ナレーションで説明されている要素、またはテキストで説明される要素をグラフィック部分に乗せてはならない。情報の重複および過多が生じる。ゲームとかの字幕実況の時、字幕を理解するためにいったんグラフィックから目をそらすでしょ?

・パーソナライゼーションの原則。対話形式の講義は効果的である(Sorden 2012)。おそらく活発なフィードバックによる学習・動機補正がつくから。

シグナリングの原理。矢印・ハイライト・下線などを用いて学習者に焦点を当てるべきところを指定するのはあり。特にどれが重要かが分別つかない初心者に効果的である(Ibrahim 2012)。

・セグメント。すべての学習要素をひとまとめにするのではなく、ある程度のところでチャンクにし、また学習者がチャンクに関する制御をできるようにする。動画でいうチャプター分けと再生バーの操作、それを扱う人は消して多くはないが、だが実装して損はない。またこれに付随し、長すぎる授業は疲れて学習効果が薄れる。

・事前学習原理。学習内容を事前に把握しておくととても有利。事前知識は交絡変数として処理されるぐらいには一般的だし効力がでかい。

・音声原理。マルチメディアでのナレーションにおいて、生声は合成音声より有利らしい。たぶんイントネーションや不気味の谷に対する余計な処理、抑揚等の非言語的聴覚刺激による優位性のことを指してる。

・イメージの原理。講師のイメージ映像はあってもなくてもいい。少なくとも意味のある学習には影響しない。

 

限界事項。時間ないので直接引用。

 Examine why a small discrepancy between on-screen text and narration is beneficial 
whereas a large discrepancy is not.
 If the interactivity effect for memory is reproducible
 The effects of attention guidance on transfer tasks
 Establish more specific instructional guidelines for the optimal size of textural 
information
 Determine best practices using the multimedia principles with learners who have high 
prior knowledge
 Experiments need to be conducted in more learning/classroom environments than 
laboratory environments

 

 

参考文献

Mayer, R. E. (2014). Cognitive theory of multimedia learning. In R. E. Mayer (Ed.), The Cambridge handbook of multimedia learning (pp. 43–71). Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/CBO9781139547369.005