「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{155}Lucas, K., & Sherry, J. L. (2004)

ゲームの人口層における男女差をコミュニケーションの理論にて説明を試みた調査。

 

大学生593名(平均19.71歳 女性313人)を対象。好きなゲームジャンル、動機づけ(Uses and Gratification instrument)、週平均プレイ時間を回答。ゲームジャンルと動機づけの構成は[154]と同一。

 

結果。今回調査したサンプルのうち、88.3%の男性と54.6%の女性がプレイヤーであると回答した。週平均プレイ時間は8時間であり、男性は平均11時間、女性は平均4.25時間だった。今回のサンプルにおいても、プレイ動向の性差は確認された。

動機づけについて。社会的の項目は男性のほうが優位であり、有意差がみられた。週平均プレイ時間を共変量に置いたところ、有意差は変わらなかった。挑戦の項目は男性優位であり、有意差がみられた。

ゲームジャンルの選好について。男性は「物理」が好きで女性は「伝統的」が好きという[154]と同じ傾向が得られた。

 

統計的に、女性プレイヤーはゲームに対する動機づけが弱い傾向にある[132]が、それがなぜ引き起こされているかは不明瞭なとこが多い。

この論文はゲームプレイを対人における手札の1枚であると仮定したうえで、女性がゲームという手札を持つことが好ましくないという観念とそのように示唆する周囲が、女性のゲームプレイを抑制しているのではと結論付けている[154]。また、現在のゲームコミュニティが男性優位であり、結果として女性ではなく男性を受け入れやすいというお話もある。がただし、この方向からの説明は動機づけ全体の2割程度しか説明できていないことに留意すべきである。

また、3Dグラフィック等の空間把握能力が男性のほうが優れているためプレイ人口が男性優位になる、という認知的側面から切り込みを入れている人もいる。

ゲームデザインそのものが男性優位であるという話も聞く。

ただ、ゲームプレイによる欲求充足やゲーム継続理由・離脱理由に性差はなく、どちらも[102]が説くような構造の最適化が刺さるとしている[141][135][132]。

個人が抱える動機の占有率と変動傾向に性差がある可能性がある。先ほどの手札の話を引用して、この手札の中身やそれが入れ替わる理由や入れ替わり方、枚数保持の違いが引き起こしている可能性…を考えると本論文のコミュニケーションを軸にした主張が手札構築の「なぜ」を説明する一因になる。IGDを語るモデル[146]を流用して、ゲーム以外に注力を割きたいことがあればそちらに労力を割くという一般的傾向があるが、ここに性差を見出せないかというお話ともいえるが、もし有意であればその一因に今回のコミュニケーションが上がるはずだ。

Minecraftのような男女ともに受け入れるゲームと、男性優位のゲーム、女性優位のゲームをそれぞれ分析し、その差分を抽出するという手がある。このとき、マクロ理論に従った動機付けの抽出ではなく、期待価値理論のようなミクロな動機理由を抽出するほうがいいだろう。

 

 

参考文献

Lucas, K., & Sherry, J. L. (2004). Sex Differences in Video Game Play:: A Communication-Based Explanation. Communication Research, 31(5), 499–523. https://doi.org/10.1177/0093650204267930