「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{176}Fiorella and Mayer. 2014

教えることの利点を認知心理学から問うた実験。

 

実験1。米国西部の大学の心理学徒95名(平均19.1歳 男性41名)を対象。教示/テスト×普通/強化の4群間を比較。ドップラー効果を題材とし、質問に答えられるように備える群と、3分程度の講義ができるように備える群に分ける、なお実際は講義を行わない。教材は特に意識されていない紙媒体教材と、マルチメディアの原則(Mayer 2009など)に従った教材を使った群で分ける。

計測。ドップラー効果に関する6つの自由回答の理解度テスト、28点満点。動機項目に関するアンケート。

結果。講義ができるよう備えた群は質問に答えられるよう備えた群よりも理解度テストにて好成績を残した。授業形態による主効果や相互作用は確認されなかった。

講義を備えた群は学習中に多くの努力を費やした、楽しかった、理解を深めたいという自己申告の傾向がみられた。これは講義に備え学習行為に必要性を見出したからである。授業形態による主効果は確認されなかった。

 

実験2。米国西部の大学の心理学徒104名(平均18.4歳 男性28名)を対象。教示/テスト×指導あり/なしの4群間を比較。ドップラー効果を題材とし、テストがあることを知らされそれを行った群、教鞭をとることを知らされず行った群、教鞭をとる姿を録画した群、実際に教鞭をとった群に分ける。教材は実験1の強化版教材の改良版。その他は実験1と同じ。実験の1週間後に理解度テストを行った。

結果。教材を実際に教えることについて主効果が得られた。

教材を実際に教えることになった群は有意に理解度テストの成績が良かった。教鞭をとることを知らされなかった群は教えたことによる主効果は発現したが、教鞭への備えによる効果は生じなかったか、前者との差が生じた。教鞭をとる姿を録画した群、つまり実際には授業をしなかった群は負の効果を示した。

動機項目に関しては条件間で差がみられなかった。これはアンケート実施が理解度テストと同時に行われたためだと推測される。

 

即時条件および遅延条件の両方において、何かを教えることに期待されること、また実際に教えることは、教える側の学習と動機において優位であることが示唆された。

何かを教えるということは、まずそれについて深く理解しておく必要がある。指導中に隅をつつかれるような質問が来ても対応できるように、準備する。

あるいは実際に授業することは、学習内容を整理するための言語化が強いられる。自分なりの言葉で整理することで、より学習に深みが増す。

「教鞭を持つ」こと、またそれへの期待は、深い学習をもたらすための1つのキーワードなのかもしれない。動機付け論でいえば、同一化的調整の提供となる。学習の必要性の適応だ。

であれば、「教鞭を持つ」ことの提供時には、余計な茶々を入れないよう警戒せよ。この期待は自分が授業に挑めるように学習する必要がある、という自律性が基盤となる。これを崩さないようリカバーが欲しい、実験では授業中であれば質問が可能であった。そして外的調整の度を強くしない。そうでなければ、やらされている動機が必要性の動機を上回り、姿勢を崩し、成果を削ぐ可能性が出てくる。

 

 

参考文献

Fiorella, L., & Mayer, R. E. (2014). Role of expectations and explanations in learning by teaching. Contemporary Educational Psychology, 39(2), 75–85. https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2014.01.001