{170}Hegarty, M., Narayanan, N. H., & Freitas, P. (2002).
マルチメディア理論等に則り、アニメーション教材がテキスト教材の次に優位になる教材たりうるかを検証したもの。
なお、題材はすべてタンク式トイレの構造解説である。
一番最初の仮説で提示したのは構成主義に則った7段階のアニメーション教材。1:各部パーツの紹介。2:パーツの予備知識の紹介。3:各部パーツの接続。4:これらのパーツがどのように動くか、視聴者に投げかける。5:接続されたパーツが何を成すかの確認。6:実際の動作をアニメーション。7:構造の理論的解説、ここではサイフォンの原理を説明。
この構成の教材と、図と文で構成された因果連鎖の順に並べられた教材、ただ図と文で構成された教材、3群に分かれ学習、のち質問による学習達成度と学習完了時間を計る。結果は、アニメ教材が2郡に有意差を得ることはなかった。アニメーションを視聴し、これを理解するのに時間がかかったようだ。
3:を省略、1:と2:・5:と6:を統合させた改版においても、その傾向は変わらなかった。学習難度は教材の室により左右され、伝え方や表記の仕方により、少なくとも学習精度が大幅に改善されることはないことが示唆された。なんならアニメ教材が一番読むのに時間かかっている。
「もしかして、アニメーションの順序をこちら側で決めているのが悪手ではないか」という予測から、今度は視聴順序を自由に決められる群とそうでない群で比較。結果成績に有意差は発生せず、視聴時間は前者のほうが若干短かった。また2群とも視聴順序に有意差が見られなかった。
「多分これ、アニメーションとかいう情報量マシマシなものぶつけられて混乱している説ない? どこみりゃいいんだよ、どう解釈すればいいんだよ、ってなってる説なくない? これ一回視聴者に構造について咀嚼する時間を設けたほうがよくない?」という予測から、静止画にて学習したのち口頭説明を試みた群、静止画を見たのちアニメを見た群、静止画学習のち口頭説明のちアニメ見た群で比較。予想的中、静止画とアニメ見た2つの群はより多くの問題に正解できた。問題を多肢選択問題に変更し再度検証、類似の傾向が見られた。続く実験にて、静止画で学習したのちいったん自分の頭で想像してみた後にアニメを見た群は、そうでない群に比べ構造についてより正しく解説できた。
まとめると、アニメーション教材がテキスト教材を過去のものとする絶対有利な教材というわけではないこと、静止画などでいったん自分で動きを想像してみて(メンタルアニメーション)からアニメを見たほうが効率よく情報を吸収できる。
アニメ教材は、静止画などで学んだあとに「考えてみたけどいまいちピンとこない、うまくまとまらない」となったときに最適な教材であることが示唆された。
参考文献
Hegarty, M., Narayanan, N. H., & Freitas, P. (2002). Understanding machines from multimedia and hypermedia presentations. In J. Otero, J. A. León, & A. C. Graesser (Eds.), The psychology of science text comprehension (pp. 357–384). Lawrence Erlbaum Associates Publishers.