「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{27}Azadvar, A., Dalqvist, E. (2020)

ゲームプレイとその動機付けの年齢差について調査したもの。

 

RPGゲーム「The Division 2」のうち、過去2週間に1時間以上プレイしたプレイヤーを対象。青年期(n=1664 平均19.51)、成人期(n=4297 Mean= 30.12)、壮年期(n=1856 Mean= 44.67)、高齢期(n=303 Mean= 60.33)のグループに分け、分析。

用いた指標。自己決定理論を基盤とした指標UEPQ(Azadver and Canssa 2018)、リッカート5段階。人口統計学的要素、週当たりのプレイ時間、月当たりのビデオゲームに費やした額、好きなゲーム(自由回答)。

対象とした行動指標は、一回以上のプレイセッションをした日数、他のプレイヤーと一回以上のプレイセッションをした日数、プレイ時間、マルチプレイ時間、最大スコア、最大レベル。

 

結果。

基本的に、年齢とプレイ時間には正の有意な相関がみられ、これはシングルプレイ時により強く見られた。

熟練度、つまりプレイへの上達は年齢と負の有意な相関。これに関連してか、有能感充足も年齢と負の相関。値こそ小さいが、高齢になるほど熟達に時間がかかるか、高齢による認知能力の制限がかかっていることを示唆している。

また年齢とともにストーリーを重視する傾向にあった。

自己申告の週当たりプレイ時間と月当たり課金額は年齢と負の相関を示した。

 

これをどう解釈するか。正直に「高齢者ほどゲームに熱量をもってプレイしている」とするか、「ゲームに熱量を持てる人が高齢者になってもプレイしている」のか

後者の考察をしたのは、高齢者のサンプル数が他の群と比べて桁一つ少ないこと、没入動機という少数派の動機が年齢とともに増加傾向にある、ことを要因としている、一種の生存バイアス。ただし、RPGは比較的高齢に好まれやすく、比較的長時間プレイされ、没入動機がプレイ理由に選択されやすい傾向にあるGhuman, D. & Griffiths, M.D. (2012)。

高齢者になるほど、いわゆるカジュアルプレイ層はゲームプレイから離脱し、よりプレイ動機が確固な層がそのまま残り続けるのだろうか。他のジャンルのゲームにおける世代間のプレイ傾向も調査すべき。

 

 

参考文献

Azadvar, A., Dalqvist, E. Aging Agents: Cross Generational Analysis of Behavior and Need Satisfaction Among Players of Tom Clancy’s The Division 2. Comput Game J 9, 245–262 (2020). https://doi.org/10.1007/s40869-020-00104-6