「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{151}Oswald, C. A., Prorock, C., & Murphy, S. M. (2014).

手続き。小規模な大学からのサンプル、オンライン募集に受け付けたサンプル、合計173名(男性101名)の18歳以上かつゲームプレイを行なっている人を対象。

自由形式の質問に対する回答、「直近で、ビデオゲームを30分以上プレイしたときの経験を思い出してください。どういったゲームで、プレイしたときに何が起こったかを教えてください」定性的調査。のち回答をコーディング。あらかじめ決められたカテゴリに分類するのではなく、一定のテーマに沿って注意深く読み解き抽出する作業を行なった。

 

結果。6つの主要なカテゴリ、13のサブカテゴリ、57のテーマが抽出された。主要なカテゴリはそれぞれ感情反応(emotional responses)・ゲームプレイ(game play)・社会的(Social)・成果(Outcomes of game play)・目標(Goal)・個人的資質(Personal qualities)である。

ゲームプレイにより経験されるものはポジティブ感情であることが圧倒的である。これは動機としても機能し、なぜゲームに時間を費やすのかという問いに対し「楽しいから」と返すことが一般的であることを指している。他の研究も示す通り、ネガティ感情や逃避を理由にプレイする人は少数である。

また、ゲームが特有の挑戦や実験的環境あるいは景色や体験を提供してくれるという供述も多く見られた。

社会的な意義を説いた文脈は一定数見られた。社会的圧力などの統制要素も確認された。

 

有能感項目とされるアチーブメント等成果項目が決して高くない割合であることに関する所感。有能感はキャラ操作等フレーム単位で加算されていくものでもあり、その極地は「歩いてるだけでも楽しい」であり、決して成果のみが有能感を満たすわけではない。また、このあり方は外発的動機付け寄りである。

暴力的描写が暴力を引き起こすという古来からの主張はますますその信頼性を失っている。暴力的描写がプレイ経験において決定的であることは少なく、描写をどう認識するかはその人の個人的・環境的要因によるところが大きく、またプレイにより経験できるものはプレイ経過により大胆に変動していく。

→今回の定性的調査などで抽出されたプレイ体験により得られるものは、プレイ時間の累積によりどのように変動していくか、またその変動は動機付け理論により説明できるか。仮説として、欲求充足/阻害の経験により得られるものはポジティブ/ネガティブに変動していくが、完全な切り替わりではなく有意な調整スタイルの入れ替わりや一時的な離脱などかなり多様かつ曖昧な変動として観測されるだろう。これはプレイ時間継続要因と離脱要因を一挙に論じれる証拠となる。

 

 

 

参考文献

Oswald, C. A., Prorock, C., & Murphy, S. M. (2014). The perceived meaning of the video game experience: An exploratory study. Psychology of Popular Media Culture, 3(2), 110–126. https://doi.org/10.1037/a0033828