「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{166}Shanna Cooper, Lindsey M. Lavaysse, David E. Gard. (2015)

統合失調症患者の因果志向の傾向を調査したもの。

 

研究1にてGCOS尺度の改良とその妥当性チェックを行い、研究2にて実際に集計する。

研究1手続き。大学生n=360対象、授業の単位と引き換えに参加。動機づけ志向の尺度としてGCOS(Deci and Ryan 1985)を採用、調整用に動機づけ特性質問票(MTQ)と内発的動機付け目録(Ryan 1982)を採用。質問の冗長性と項目-総尺度相関が.30未満の項目を削除。統合失調症患者対応のGCOS尺度は従来の尺度とそこまで乖離することなく、その妥当性を維持した。表3を参照、すごく頑張ってる。

 

研究2手続き。臨床的に安定した統合失調症n=28と統合失調感情障害n=16の外来患者と健常者n=42を対象。診断名と欠如基準はDSM-Ⅳ-Clinician Version(SCID: First et al. 1997)を参照。除外基準は頭部外傷・意識喪失の既住、神経障害、英語での非流暢性、過去3か月での入院、過去30日間での投薬量の変化。人口統計学的要素等は表4を参照。

尺度は研究1にて開発したGCOS-CPとPANSS(Kay and Sevy, 1990)とQLS(Bilker et al. 2003)を使用、自己申告にて。

 

結果。郡内差の傾向について、健常者は自律的志向>統制志向>非人格的志向、患者群は自律性志向>統制志向≒非人格志向となった。

郡間差について、患者群は健常者よりも自律性志向の割合が少なく、非人格的志向の割合が多い傾向にあった。統制志向に有意な差は見られなかった。図1を参照。

自律性尺度に注目した時、中央値より低い患者が33名、高いと答えた患者は11名であった。自律性志向の高さはPANSS陰性症状と関連していた。自律性志向が強い患者は症状が弱いのに対し、非人格志向の患者はネガティブな症状が増加する傾向にあった。

因果志向は対象がどの動機付けを採択しやすいかの傾向を示したもの。統合失調症患者は非人格的志向を採択する可能性が比較的高く、特に自律性の阻害からくるこの傾向はネガティブな効果を生じさせる可能性がある。無気力やアパシーがこれにあたるとされる。

 

 

参考文献

Shanna Cooper, Lindsey M. Lavaysse, David E. Gard. Assessing motivation orientations in schizophrenia: Scale development and validation. Psychiatry Research, Volume 225, Issues 1–2, 2015, Pages 70-78, ISSN 0165-1781, https://doi.org/10.1016/j.psychres.2014.10.013.