「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{122}黒田 祐二, (2022)

自律性支援の知覚と内在化の度合いの関係についての体系的なレビュー。

 

American Psychological AssociationのPsycINFOに以下の検索式を打ち込む。(“autonom* support*” OR “support for autonomy” OR “needs support”) AND (prosocia* OR moral* OR friend*)。社会的行動に対する自律性支援とその内面化との関係を取り上げたもの、学会誌や学術誌に掲載された論文(紀要含む)であること、研究対象が児童と青年であり臨床サンプルでないこと、を条件とした。

結果。15本の論文がレビューの対象となった。以下はレビューのまとめと研究の傾向である。

全体的な傾向として、自律性支援の「理由の説明」「子供視点」を検討していること、横断的研究であること、全般的に自律性支援が深い内在化に正の効果を与えていること、この効果は性別・年齢・社会的望ましさと親の温かさ(Roth 2008)等を統制しても現れたこと、が挙げられる。

効果の詳細。全ての検討数(独立-従属の関係を1つとしてカウント 計25)に対する割合を見ると、正の効果64%、効果なし32%、交互作用4%、負の効果0%となった。ただし、効果なしと評価した研究は、その一部は自律性支援と内在化の正の有意な関係を見出していること、重回帰分析等で用いた他の独立変数が影響していることが関係している。

Soenens et al. (2015)は、子の内面化に実質的に影響するのは子が支援を自律性支援として知覚しているかどうかであると主張しているこれは他の研究でも確認されているパスであり{81}、今回のレビューでも同様の傾向が見られた。他の評定者による傾向や支援者の差異による傾向は検討数が少ないものの、前者は研究者による評定が、後者は母親による支援が、予測通りの結果をもたらすことが示唆されている。

課題としては、横断研究がほどんどをしめていること、子の自己申告に頼った評価であることが挙げられる。示された関係はあくまでも相関関係であり、バイアスが乗っている可能性も否定できない。また、自律性支援自体は普遍的な効力だが、その手法の文化的差異に関しては現時点では曖昧である。自律性支援と関係性動機付け理論、欲求充足の交互作用的関係とのかかわりも調査するべき。また、なぜ自律性支援を選択するのか、なぜ統制を選択するのかの要因についても不明瞭である。

 

 

参考文献

黒田 祐二, 社会的行動に対する自律性支援とその内面化との関係 : 実証研究の概観, 福井県立大学論集, 0918-9637, 福井県立大学, 2022-10-20, 58, 117-147, https://cir.nii.ac.jp/crid/1050577431097166208