「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{146}Xu, Z., Turel, O., & Yuan, Y. (2012).

オンラインゲーム中毒の原因とその対処方法を調査したもの。

 

仮説群。Yee(2006)が掲げる動機の強さまたは現実逃避の必要性がオンラインゲームのプレイまたはオンラインゲーム依存症を予測するとした。またプレイ時間が依存症に関わってるとも推測。ゲーム以外の注視すべき活動の存在は依存度を低下させる。説得は同じく低下させる。教育や指導により自身の依存に対する疑いを持たせ、同じく低下させる。親による監視は同じく低下させる。親などがゲームプレイの時間を制限すると同じく低下する。知覚されたコストが高すぎた場合、同じく低下させる。

 

手続き。中国の大都市に住まう中学生を対象にアンケート、直接的ではなく生徒にかかわりが深い場所に設置し間接的な配布を行う。623件が有効。平均年齢は15歳で若干男性優位(56%)。

いくつかのパイロットテストを経て尺度を作成。動機の強さまたは現実逃避の必要性はCharlton(2002)やYee(2006)より。説得(Dissuasion)はBabor(1994)より。教育や指導はEisen et al.(2002)などから。知覚されたコストはWu & Wang(2005)より。注意すべき活動はWan & Chiou(2006)を参照。親のモニタリングはDishion & McMahon(1998)より。プレイ時間の制限はJeong &Kim(2007)を参考に。ゲームプレイはプレイ時間やプレイ頻度を尋ねた。

 

結果。P<.001の結果を抜粋。熟達動機の強さはゲームプレイを予測。逃避動機の強さは依存症を予測、逃避動機がIGDスコアを予測した研究{59}、理論{60}、精神状態と問題行動のパスを調べた研究{137}と一致する結果。ゲームプレイは依存症を予測、必然的に長くなるのでこうなる。中止すべき行動の存在は依存症を負に予測。説得は依存症を予測。教育や指導は依存症を負に予測。知覚されたコストはゲームプレイを負に予測。

ゲーム以外に楽しいこと・注力すべきことがある人はそちらに労力を割く、{132}でも同様のことが説かれている。依存症に対する有力な対処にまずこれが挙がるのだろう、ゲーム以外の何かに注力させる、或いはより健全なものに依存させる。次点は時間をかけた指導による気づきへの誘導か。

説得やプレイ時間の制限は依存症を負に予測しなかった、なんなら正に予測している。依存している人から無理やりそれを取り上げようとしたとき、患者はそれに対し強い拒否反応を起こす(Reinhart et al. 2006)が、それと同じ原理だろう。彼らはそれに頼るほかなく、それを取り上げたら無になるほかない。ゲームばかりして勉強をしない子からゲームを取り上げた場合、ただ勉強をしない子になる。勉強に対する動機付けが何もなされず、ゲームに対する強い動機付けと欲求が阻害されているためより悪化する。ゆえに、必要なのはゲームの抑制ではなく勉強への動機付けである。

 

 

参考文献

Xu, Z., Turel, O., & Yuan, Y. (2012). Online game addiction among adolescents: Motivation and prevention factors. European Journal of Information Systems, 21(3), 321–340. https://doi.org/10.1057/ejis.2011.56