「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{118}Przybylski, A. K., et al. (2014)

ゲームプレイによる短期的攻撃性の発現と心理的欲求の関係について実験・調査したもの。

 

「はいクソー。二度とやらんわこんなクソゲー」を真面目に取り扱った研究。正確に言えば、今まで暴力的描写により起こされていたとする攻撃性を、ゲームプレイによる欲求不満からくるものと仮定し、実験を行ったもの。暴力的描写と攻撃性の表れはあくまでも相関関係であり、暴力的描写→攻撃性という因果関係を示した証拠は少ない。

暴力的かつ複雑な操作のゲームと非暴力的かつ簡単操作のゲームのプレイを比較し、発生した攻撃性の由来が暴力か操作難易度(有能感充足)かを見極めたStudy 1。同ゲームで暴力的/非暴力的条件を設け、同じく由来を探ったStudy 2。同ゲームで複雑操作/単純操作条件を設け、攻撃性発現が有能感の欲求不満によるものかを確かめたStudy 3。Study 3条件を用いて、ゲームの楽しさと攻撃性発現(欲求不満)の関係を探ったStudy 4。操作習得の機会による有能感充足は攻撃性の低下につながりゲームのモチベーションが高まると仮定し、複数回のプレイを行ったStudy 5。攻撃性指標としてホットソースパラダイムと同原理のテストを用いて実験を行ったStudy 6。日常的な文脈における有能感の欲求不満→攻撃性を確かめるための調査を行ったStudy 7。

結果。プレイヤーの有能感欲求を阻害するゲーム要素はプレイヤーの攻撃性発現を予測することが示唆された。暴力的描写は攻撃性発現を予測せず、また有能感阻害も予測しなかった。また、有能感充足はゲームの楽しさを正に予測し、攻撃性発現(欲求不満)は負に予測した。有能感が充足されれば、短期的攻撃性は低下した。

ゲームがうまくできない時に口が悪くなる現象がマクロな心理学の支持を受けたことは、こうした現象が普遍的に起こりうることを指している。発現の度合いは個人差や環境差分によるものと思われる。

 

 

参考文献

Przybylski, A. K., Deci, E. L., Rigby, C. S., & Ryan, R. M. (2014). Competence-impeding electronic games and players’ aggressive feelings, thoughts, and behaviors. Journal of Personality and Social Psychology, 106(3), 441–457. https://doi.org/10.1037/a0034820