「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{106}Przybylski, A. K., Ryan, R. M., & Rigby, C. S. (2009).

暴力的描写が短期的な楽しさに関わっているかを検証したもの。

 

ESRBレーティングを参照に暴力的描写をランク付け。自分の好きなゲームとそれに対する体験を質問票で答えてもらったStudy 1。暴力的なゲームを遊んだ時の楽しさとか攻撃性とかを計測したStudy 2。暴力的ゲームと非暴力的ゲームのプレイ群の比較から楽しさや攻撃性との関連を計測したStudy 3。同じゲームで暴力的/非暴力的条件を作ってそのプレイ群の比較から楽しさや攻撃性とかの関連を計測したStudy 4。同じゲームで暴力的/非暴力的描写を作ってその差分を計測したStudy 5。ESRBレーティングと楽しさ・攻撃性等の関連を質問票から計算したStudy 6。

結果。すべての研究を通して暴力的要素が直接楽しさをもたらすことはなかった。暴力的ゲームによる楽しさは大部分が心理的欲求充足によるものである。暴力的描写による効果は心理的欲求を統制した場合、楽しさと負の相関を示した。GTAが楽しいのは暴力があるからではなく、なんでもできるから。

Study 2など、個人の攻撃性が暴力的ゲームの選好(将来、このようなゲームを遊びたいと思うか)を予測したことから、もともと攻撃性が高い人が暴力的描写を好む傾向が示唆された。暴力的描写はフィードバックの一形態でありそれそのものが楽しさを生み出すことはなく、フィードバックの形態は個人の選好要因にはなる可能性がある。

これらの実験は暴力的描写が短期的な楽しさに関わっているかを検証したものであり、長期的なプレイによる攻撃性の成長に言及するものではない。ただ、今回の選好傾向を見る限り、長期的に暴力的なゲームをプレイする人はもともと攻撃性が高い人で在る可能性は充分にある。あと自己申告式の下り。

 

 

参考文献

Przybylski, A. K., Ryan, R. M., & Rigby, C. S. (2009). The Motivating Role of Violence in Video Games. Personality and Social Psychology Bulletin, 35(2), 243–259.