「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{95}Rachel Kowert et al. (2015)

孤独感とか自尊心の低下などがオンラインゲームへの関与の原因なのか結果なのかを調査したもの。

 

ドイツのゲームプレイヤーよりサンプル抽出、サンプルを思春期(14-18)・青年期(19-39)・成人期(40~)に区分。電話調査、1年間隔で2回行われた。オンラインゲームへの関与、孤独感、自尊心、生活満足度、社会的能力を回答。1回目の回答時、36%がオンラインゲームに暴露していると回答。

 

結果。基本的に、オンラインゲームへの長期的な関与は安定しない。

心理社会的な要因とゲームの関係は発達段階に左右される。青年期の社会的能力とゲームプレイに負の相関、1年目で社会的能力が高いと回答した人は2年目でプレイヤーになる確率が低かった。思春期は、1年目でプレイヤーだったことと2年目の生活満足度に正の相関。青年期において孤独感はゲームの関与と正の相関を持つが、有意な関係ではなかった。成人期において生活満足度とゲームの関与は負の相関を持つが、有意な関係ではなかった。社会的能力は2年目におけるゲーム関与と負の相関。

生活満足度・社会的能力とオンラインゲームプレイには有意な関係が見られたが、孤独感や自尊心とは有意な関係が見られなかった。生活満足度が低い人・社会的能力が低い人ほど、オンラインゲームへの関与を報告した。思春期プレイヤーは生活満足度の向上を報告したことから、思春期のゲームへの暴露は悪であるとは一方的に言えない。報告の限り、ゲームプレイによって孤独感や自尊心は有意な変動を起こさないことが示唆された。

つまるところ、オンラインゲームプレイが原因で自尊心が低下したり孤独感が悪化したりする可能性は低い。少なくともそこに有意な関係はないし、そもそもオンラインゲームへの長期的関与が安定しないから必然的に有意な関係をもたらさないというのもある。IGDが二次障害だとする主張と一致する{58}{59}。

 

 

参考文献

Rachel Kowert, Jens Vogelgesang, Ruth Festl, Thorsten Quandt, Psychosocial causes and consequences of online video game play, Computers in Human Behavior, Volume 45, 2015, Pages 51-58,