「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{59}Stéphanie Laconi, Sophie Pirès, and Henri Chabrol. (2017)

逃避・対処・空想動機はIGDスコアを予測。

週平均プレイ時間はIGDを有意に予測しない。

IGDスコアとアクション/アドベンチャーゲーム選好がリンク。

IGDの人は精神医学的苦痛をより多く体験していたが、動機・IGD・精神医学的苦痛の因果関係やパスの詳細は不明。

IGDの傾向は男性に強くみられた。年齢とIGDスコアに有意な関係撒見いだせなかったが、これはサンプルに余りばらつきがなかったことが由来だと考えられる。

 

IGDの対象を多義的に捉え、オンライン以外のコンピューターゲームも範疇であると仮定し考察。

逃避や対処に関しては想像通り。ゲームを代替欲求として扱かおうとしているさまと、扱わざるを得ない状況の表出ととらえられる。上記考察はIGDを二次障害として認識した場合だが。

空想について。RPGが今回の研究に含まれていない(対象ジャンルの狭さは当該論文も制限事項として言及している)し、IGDと診断できるスコア持ちのサンプルがn=8のため偏りの可能性を排除しきれないが。IGDの基準をざっくり言うなら「ゲームに夢中になりすぎて現実をおろそかにしているかの度合い」。RPGなどのストーリーが濃いゲームを、その動機を維持しながらプレイするためには、ストーリーの理解・解釈・考察のために相当の時間を費やす必要がある。実際にプレイしている時間だけではなく、プレイ外の空想の時間もこれに含まれる。だから個人的には、ただRPGを健全に楽しんでいるだけなのに「ゲームにめっちゃ時間を割いている」判定を貰ってIGDスコアが高くなる可能性があると思える。空想・逃避・対処動機間の相関は有意だが、それ以外の動機と共存している可能性も考えられる。結局は比重の問題。時間をあまり見失わない程度の没頭であれば問題ないと思われるし、これらの結果をもとにRPG好きな奴はゲーム障害者と決めつけるのは時期尚早。そもそも決定的な因果はゲームジャンルじゃなくてプレイ動機だし、もっと言えばプレイ動機が構築される環境にあるし。

 

 

参考文献

Stéphanie Laconi, Sophie Pirès, and Henri Chabrol. Internet gaming disorder, motives, game genres and psychopathology. Computers in Human Behavior Volume 75, October 2017, Pages 652-659