「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{83}島田 英昭, 三和 秀平, (2020)

オンライン学習における動機付けを3つの理論から説いたもの。

 

動機付け論初級者にちょうどいい文章。
報酬・期待・自律の観点から説いている。

 

報酬も有効な動機付けではなるが、外発的動機付けに属し、効力は短期的である。それを理解した上で、段階的な目標の設定や即時フィードバックを提供するのが良い。罰に関しては基本的にやらない方がいい、無力感醸成につながる。「それでも罰が使われる背景には,罰以外の指導方 法の無知や罰の誤帰属等がある」なかなか言いおりますな、全くの同意見だが。

 

ここで言う期待はわかりやすさや認知のしやすさ、処理のしやすさのような側面を持つ。一見わかりやすそうな教材は、それだけで期待価値理論でいうコストを下げる。あと人間の認知能力には限界があるし、1つの機能に割り振れるメモリも限られている。マルチメディアラーニングに則った教材の提供が求められる。

添えておくが、ここで言うわかりやすいは主観であり、客観ではない。そして、それを加味しても「わかりやすい」は追求するべきである。

 

自律の側面は、いつものOIT。選択肢を提供して、フィードバックを提供して、つながる機会と場所を提供する。関係性は内在化を行う上で軸となる欲求であり、これの充足/阻害が成功/失敗を決めると言っても過言、全部必要。Comment screenなる某動画サイトみたいなコメント投稿機能は、関連性充足の観点から見てかなり優秀だろう。断片的ではあるが、対話が行われているのだ。
長期的な学習、自律的な学習を推し進めたい時、OITや関係性動機付け理論に則った提供は求められるだろう。

OITによる学習への効力、特に成績等の客観的評価の表出は理論上かなり長期で見ないと有意にはならないだろう。介入しているのは取り組む姿勢であり、直接的な指導や技術改善ではない。ただここの育成しないと、学習という長期的なものに耐えられなくなる。そして生まれる「あの時勉強すればよかった」と言うセリフ。事実として学ぶための客観的資源が足りないというのもあるが、この発言は現在までに学習に対する自律的/内発的動機付けが育成しきれなかったことを指す。もし本当に後悔していれば、これを動機付けに勉強しているはず。彼らは動機付けされていない過去の自分に責任を押し付け、同じく動機付けされていない現在の自分から逃避しているのだ。

この状況は少なからず次世代に伝染する。注意せよ。

 

オンライン学習という、教員不在の学習環境。従来とは異なる形態であり、従来通り一長一短な形態だ。

コンテンツ制作に関する細かな指摘は上記で挙げたが、これに1つ付け加えたい条項として、オンライン授業と従来の授業を自由に選択できる環境を整え、これを普遍的な文化へと持っていくことを挙げる。もう1つの自律性充足である。

2つの形態は好みが分かれることだろう。こと、まだ作りが荒いオンラインと、形骸化著しいオフラインでは、それが顕著だと推測。ゆえに、ここで1つ選択を挟む。慣らすのは難しいが、ゆくゆくはドロップアウトの解決策になると思われる。

 

 

参考文献

島田 英昭, 三和 秀平, 動機づけ理論からみたオンライン学習の継続性, コンピュータ&エデュケーション, 2020, 49 巻, p. 27-33,