「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{82}岡田 涼, (2010)

小学生から大学生までの動機付けの変化をメタ分析で求めたもの。

 

今回は外的調整・取入れ的調整・同一化的調整・内的調整の4つを扱う。

全体を通して、隣り合う動機付けの相関は強く、離れた動機付けの相関は弱いか無相関だった。しかし、段階によってそれぞれ異なる特徴を持っている。

 

小学生は統制的動機付けと自律的動機付けの両極端になる傾向が見られた。因子分析を行った結果、相対的自律性と相対的統制を示す2つの因子が見出された。相対的自律性は自律的動機付けに、相対的統制は統制的動機付けに高い負荷量を示し、明らかな格差が見られた。[77]での私の予測と一致する。内在化のプロセスがまだ未熟であり、2つの動機付け間に明らかな隔たりが生じていると思われる。

中学生と高校生はすべての動機付け概念間に正の相関が見られた。因子分析を行ったと結果、動機付けの高低を示す1つの因子が見出された。混在というか、混乱といったほうが正しいのだろうか。思春期や青年期に突入し、社会的指標を気にするようになり、同時に複数の動機付けが発揮している可能性がある。

大学生はOITの理論通りの兆候を示した。隣り合う動機付けの相関は強く、離れた動機付けの相関は弱いか無相関を示した。因子分析を行った結果、相対的自律性と相対的統制を示す2因子が見出された。ただし、小学生に見られた明らかな隔たりはない。内在化についてある程度のノウハウを積んだからだろう、各種動機付けと(理論通りの)折り合いをつけていると考えられる。

小学生や大学生は自律的動機付け/統制的動機づけを、中学生や高校生は複数の動機付けから個人の動機付けの在り方を記述する動機付けスタイル{77}を扱うほうが有効だと考えられる。

あと年齢差(発達段階)によっても動機付けの在り方が異なることが示唆された。どの段階においても基本的心理欲求理論は通用はするが、OITや因果志向理論で問われる要素は人口統計学的要素に揺さぶられる。同じような議題で、因果志向理論を題材にするのはどうだろうか?

 

 

参考文献

岡田 涼, 小学生から大学生における学習動機づけの構造的変化, 教育心理学研究, 2010, 58 巻, 4 号, p. 414-425,