「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{6}Chris Perryer,Nicole Amanda Celestine, et al. 2016

この論文は、ゲーミフィケーションによる生産性向上についての知見を整理し、利用の最適化を試みるものである。

ゲームは明確な実用的目的がないにもかかわらず、強力な内発的動機付けを促進させる。自己決定理論や目標達成理論などの動機付けの理論はそうしたゲームの特性を説明しようと試みており、ゲーミフィケーションはそうしたゲームの特性を活用しようとする試みである。

が、ゲーミフィケーションは2010年代より(GBL等を含めれば2000年代より)本格的に探究が始まった分野であり、サンプルサイズや測定方法の問題など新興分野では珍しくない問題に悩まされている。Hamari et al.(2014)によるメタ分析では、ゲーミフィケーションによる介入の効果は、ゲーム要素の仕様と利用者の特性に大きく依存することを発見した。仕様への依存については、ある研究ではゲーム要素の導入が内発的動機付けを増加させた(Banfield and Wilkerson,2014)が、ある研究ではモチベーションを低下させた(Hanus and Fox,2015)という矛盾する結果がこれを説明している。これはバッジやポイントなどのゲーム要素が外発的動機付けとしても働くからであり、この外発的動機付けが内発的動機付けを弱めているからである。

また、ゲーミフィケーションされた課題は課されたものであり、実行の意思決定ができる転用元のゲームと大きく異なる。また、課題は利用者の特性を特に考慮することなく課されるものであり、利用者がその特性に配慮して選択できるゲームと大きく異なる。この2点も、ゲーミフィケーションによる動機付けの効果を大きく左右する。

これらの知見を踏まえ、職場における有用なゲーミフィケーションについて、社会的要素を包含するゲーム要素の導入,ポイントによるタスク達成度の管理と特典との交換,即時かつ明確なフィードバックの提供を提案する。特にポイントの導入は、単純な報酬として導入するのではなく、タスクや目標の進捗と達成を示唆するものとして導入されるべきとした。そうした導入により、外発的動機付けによる目標と手段の逆転を防げると主張している。

 

引用文献

Chris Perryer,Nicole Amanda Celestine,Brenda Scott-Ladd and Catherine Leighton. Enhancing workplace motivation through gamification: Transferrable lessons from pedagogy. The International Journal of Management Education Volume 14, Issue 3, November 2016, Pages 327-335