「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{7}Katharina Jahn,Bastian Kordyaka,et al. 2021

本研究の目的は2つ。フィードバックとアバターデザインの違いは、心理的欲求充足と継続的利用にどのような影響を与えるのか。ゲーム要素を導入したタスクにおいて、3つの心理的欲求の関係はいかようなものか、である。

研究の動機について、筆者はゲーミフィケーション心理的欲求の具体的な組み合わせに関する知見がまちまちであることを述べた。筆者曰く、ゲーミフィケーション心理的欲求の充足をもたらすことを示す知見は数多いが、どのゲーム要素がどの心理的欲求を充足しているかという具体的な議論は少ないという。また、ゲーミフィケーションの場における特定の心理的欲求の充足による他の心理的欲求への影響がまだ明らかになっていないとも主張する。

仮説は以下の通り。1)プレイアブルキャラと参加者の類似度が高い場合、参加者はキャラに対する高い識別度を経験する。2)視覚的なフィードバックはそうでないフィードバックよりも診断性(diagnosticity この場合、操作によるテスト内影響の知覚の度合い)を高くする。3)ポイントなどの定量的なフィードバックはそれが導入されない場合と比べて診断性を高くする。4)キャラとの類似度は識別度,診断性と正の相関がある。5)類似度の高さによるキャラとの同一視は有能性と関連性の充足に正の相関がある。6)タスクの診断性は有能性と関連性の充足に正の相関がある。7)関連性の充足は自律性の2つの要素(意思決定と意味づけ)と正の相関がある。8)有能性の充足は自律性の2つの要素と正の相関がある。9)継続的利用は自律性の2つの要素と正の相関がある。

方法。マネキンタスクを利用。キャラスキン2条件×視覚的フィードバック2条件×定量的なフィードバック2条件+対照群の質問紙を作成、ドイツ語を話すクリックワーカー342人に用い、うち332人分がサンプルとして残った。また、3名の参加者にオンライン実験を行った。キャラスキンは参加者と同性/異性(高い/低い)の2条件を用いた。視覚的なフィードバックはキャラスキンの状態変化の有無の2条件を用いた。定量的なフィードバックはテストスコアとリーダーボードの表示の有無の2条件を用いた。対照群に特定のゲーム要素は導入されなかった。参加者には、本研究が食品の味覚知覚に対するオンラインゲーミフィケーションタスクの効果に関するものだと伝えた。ANOVAを用いて1)~3)の検証を、構造方程式モデリングを用いて4)~9)を検証した。

結果。1)は部分的に支持され、2)と3)は支持された。また、関連性充足と意思決定の相関は有意ではなく、継続的利用と意思決定関連の自律性に負の相関がみられたが、それ以外の仮説は支持された。

これらの結果から、以下が推測された。視覚的なフィードバックは診断性を高めることで、キャラスキンの利用者との類似度はキャラの識別性を高めることで、どちらも心理的欲求充足と継続的利用に影響を与えている。また、ポイントなどの定量的なフィードバックは診断性を高めることで心理的欲求充足に貢献している。継続的利用と意思決定関連の自律性に負の相関がみられたが、意思決定関連の自律性と有能性充足に正の相関がみられたことから、タスク成功による自律性充足ののちタスクへの慣れによる飽きが発生している可能性がある。関連性と意思決定関連の自律性に有意な相関がみられなかったが、詳細は不明である。

 

引用文献

Katharina Jahn,Bastian Kordyaka,Alla Machulska,Tanja Joan Eiler,Armin Gruenewald,Tim Klucken,Rainer Brueck,Carl Friedrich Gethmann and Bjoern Niehaves. Individualized gamification elements: The impact of avatar and feedback design on reuse intention. Computers in Human Behavior Volume 119, June 2021, 106702