「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{195}Dincer A, et al. 2019

語学学習における教員の自立支援が生徒の関与に与える影響を調査したもの。

 

SSMMDモデル(Skinner, Furrer, Marchand, & Kindermann, 2008; Skinner, Kindermann, Connell, & Wellborn, 2009)。これには4つの変数がある。

"コンテキスト"は教員や両親などの学習者の社会的環境を指す。"自己"は心理的欲求の充足や因果志向や価値観などを指す。"行動"は動機づけや関与の度合いを指す。"結果"は認知の発達や成績などを指す。このお話は特に学習者の動機付けと関与の形成に社会的要因が欠かせないことを指摘するものであり、今回はそれを実験的に証明する。

 

方法。混合法。量的手法はトルコの国立大語学部412名(平均19.82歳)対象。質的手法は18名対象。

自律支援は学習風土質問票(Williams & Deci 1996)、心理的欲求は活動感情状態(Reeve & Sickenius 1994)、教室への関与は教室関与尺度(Reeve, 2013; Reeve & Tseng 2011)、これは行動的・感情的・認知的・自律的の4つに分けられた、成績と欠席率。

半構造化面接。自律支援、心理的欲求、関与、欠席、コース改善のための提案、などを聞いた。

 

結果。量的結果より求められたモデルを以下。

教員の自律支援は心理的欲求を満たし、これがそれぞれの関与形成につながる。そして、学業成績へは感情と自律の関与が正の相関を示し、認知の関与が欠席率に負の相関を示した。分散はそれぞれ、成績は11%、欠席率は8%である。

面接に参加した生徒の15名は肯定的な印象を表明した。「最初は否定的な感情から入った、抵抗感があったが、徐々にそれが薄れていった」など。否定的な意見を述べた人は「やること自体が無駄である」と無力感を抱いていたり、浅い戦略で勉学に挑んでいた、この辺りは因果志向や別の社会的要因が絡んでいるだろう。

 

感情的な抵抗が薄れること、また勉学に対する自律性が担保されていると知覚した時、成績につながるような行為が促される傾向にある。また自分でもできるという無力感の解消もしくは有能感の充足はドロップアウトの確率を減らす。Reeve(2013)の見解と大体同じ。全体として、ポジティブな社会的文脈が学習を促すというお話は指示された。

もともとの成績などの効力を考慮できなかった。また欠席の理由として、外部からの圧力や責任、睡眠、一身上の都合などが挙げられた。

これ、どの心理欲求の充足がどの関与にかかわっているかの経路が知りたいな。あとこの手の奴は自律支援の暴露による日常的な変化を計測するのが一番いい、[63]みたいな。

 

 

参考文献

Dincer, A., Yeşilyurt, S., Noels, K. A., & Vargas Lascano, D. I. (2019). Self-Determination and Classroom Engagement of EFL Learners: A Mixed-Methods Study of the Self-System Model of Motivational Development. SAGE Open, 9(2). https://doi.org/10.1177/2158244019853913