「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{190}Rhiannon Lee White, et al. 2021

体育授業におけるSDT研究の実態、欲求充足/不満が何をもたらすかなどをレビューしたもの。

 

最終サンプルは34本。1999年から2020年の間に発表され、7~19歳までを対象、総サンプル数はn=1555。インタビュー形式が21%、観察研究18%、調査法18%と続く。

ピアグループ、何らかの共通点を理由に成立したグループによる緩い協調は体育授業をより楽しく、競争による影響を低下させた(Cloes et al. 2002)。緩くはあるが、3つは満たせる環境のため、問題ない。

逆に、どのような理由であれ競争を知覚させる状況は平均的な意欲を低下させる。仲間との比較、スコアや成績評価の協調、成績優良者への優遇、教員個人による格付けなどは、有能感知覚を経由し参加意欲を減退させる。具体的な経路としては、競争などにより知覚された能力の低さが露呈した時、同じく減少した関係性、またはこれ以上の関与に内的理由が見いだせないこと、あるいは自己評価のさらなる下落の知覚を防ぐため(一般に恥じらいと表現される)に、体育授業から離脱する動きを見せる。もちろん少数派である勝者はその限りではないが。

教員特性としては、生徒の意思決定を蔑ろにしない振る舞いが、生徒の意欲を向上させる。生徒の個人的特性に対し配慮や関心を持つ、グループ分けを先制の独断で行わず生徒の意見も交えて行う、などである。

成績優秀者あるいは主張にためらいがないものに対する教員の評価集中はいつでも起こりうる状況である。教員も人間である以上、フィードバックを多く得られる対象に興味を示すのは必然、ゆえに二極化が発生する、好きな人と嫌いな人の。画一授業であるために逃れられない定め、これは選択肢の提供または評価方法へのテコ入れにより対処できるか、というところ。

最適な難易度の学習課題は意欲につながる。これはどの領域においても問われる。自分の手の届く範囲よりほんの少し踏み込んだ位置にある目標が、効果的である。ただしこれは生徒自身の因果志向性により左右される。調整が難しいところであり、これの調整に生徒の個人的特性への関心が用いられる。

あるいは選択肢の提供、どの生徒も少なくとも1つは興味を示すような選択肢である必要がある、単に提供するのでは統制条件とほぼ変わらない。ある少数の優秀者に独占的に選択される状況も好ましくない、多数の自律性がそがれ、内的理由を失い、離脱の要因になる。

 

基本的に、体育授業においてもSDTは通用する。

 

 

参考文献

Rhiannon Lee White, Andrew Bennie, Diego Vasconcellos, Renata Cinelli, Toni Hilland, Katherine B. Owen, Chris Lonsdale. Self-determination theory in physical education: A systematic review of qualitative studies, Teaching and Teacher Education, Volume 99, 2021, 103247, ISSN 0742-051X, https://doi.org/10.1016/j.tate.2020.103247.