「ゲーム心理学」知見保管庫

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{131}雨宮, 俊彦, 生田, 好重, 2008

反転理論の概論。

 

人間の動機付けを状況により変化するものとして捉え、変化するものと変化する要因を言語化する試み。感情と関連した動機付け研究であり、類似例にフロー理論が挙げられる。

反転理論は動機の構成要素を4つの軸に分類、どちらの極が強いかにより表出される動機付けが異なるとした。この4つの軸自体は万人共通であり、またどちらか片方しか有意にならない。手段と目的に関するもの、目標優先志向-楽しみ優先志向。ルールに対する態度に関するもの、順応志向-否定・抵抗志向。対象との相互作用に関するもの、支配・優越志向-共感志向。基本的態度の方向性に関するもの、自己志向-他者志向。

この4軸の動機はあるきっかけにより反転する。反転するきっかけは、例えば目標優先→楽しみ優先の場合は娯楽や驚異の除去などが挙げられる。きっかけは状況的要因・フラストレーション・メタ動機付け上の飽和に大別される。この反転を上手に扱い、かつ8つの動機付け全てに適応できる人を精神多様性と定義している。

反転理論は8つの動機付けのどれを選択しているかにより、知覚した刺激により表出する感情が異なることを主張している。ゆえに、目標優先の時は低覚醒を、楽しみ優先の時は高覚醒を望む、といった差分が発生する。例として「檻の中のトラ」が挙げられている。"それにもかかわらず人間が危険行為を犯してしまう理由は、プロテクティブフレームのせいで「結局、何も悪いことは起こらない」と感じてしまうからだ"

 

フロー理論と同様、実証研究の少なさが挙げられる。特に、4つの軸の証明とその因果、表出の時間的先行性、軸の有意表出の水準に関するものが足りない。

 

 

参考文献

雨宮, 俊彦, 生田, 好重, 2008, 動機づけのダイナミズム : リバーサル理論の概要: 関西大学社会学部, 123–165 p.