「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{116}Oliver, M. B., et al. (2016)

ゲームが快楽以外のものをもたらすかを調査したもの。

 

具体的にいうなら、「Heavy Rain」や「Detroit: Become Human」のプレイ体験が何をもたらすかを明記した研究である。これらはCET定義の心理的欲求の充足やフロー状態のような単純な楽しさというよりかは、プレイヤーに洞察の機会や、明確なメッセージの提起に対する没入を提供している。そして2作をプレイした人は「考えさせられた」「新しい視点をくれた」と評価している。ゲームが単なる娯楽に過ぎないことを覆した2作を参考に、ゲームが内包するメッセージや洞察の機会がなにをもたらすかを調査した。

オンラインアンケート。n=512(male=67.8% 平均28.98歳)。自分が楽しいと感じたゲームと、考えさせられたゲームを上げるよう促し、それぞれの評価を求めた。

結果。ゲームプレイは有能感・自律性充足を介しゲームの楽しさへつながっていた、またゲームプレイは楽しさに直接のパスを持っている。ゲームのメッセージはストーリーを介し関係性充足/洞察機会の知覚を経て「考えさせられた」評価につながった、メッセージ性は洞察機会の知覚に直接のパスを持っている。

以上より、ゲームを評価する要因として楽しさ以外の「考えさせられた」経験(本文では"Appreciation"とされている)が挙がることが示唆された。楽しかった経験と考えさせられた経験はパス経路に重複がなく、独立した評価要因だと考えられる。また、3つの心理的欲求以外に、洞察の機会に対する欲求が明文化された。

 

 

参考文献

Oliver, M. B., Bowman, N. D., Woolley, J. K., Rogers, R., Sherrick, B. I., & Chung, M.-Y. (2016). Video games as meaningful entertainment experiences. Psychology of Popular Media Culture, 5(4), 390–405. https://doi.org/10.1037/ppm0000066