「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{85}原田 勇希, 草場 実, (2021)

理科の観察・実験に対する動機付けを期待-価値理論(期待×価値理論)の観点から。

 

中学生n=267を対象に調査法。自己効力感(期待)・興味,ポジティブ感情,思考活性志向(価値)・学習方略を測定。

結果として、期待×価値の乗算的効果が確認された。自己効力感と思考活性志向がともに高い(低い)とき、ポジティブ感情は問題解決方略の志向を正に説明する。自己効力感と思考活性志向どちらかが低いとき、ポジティブ感情と問題解決方略の関係性は有意ではなくなる。

ポジティブ感情→「課題を行うことで得られる楽しさ」である興味価値の、興味の強さを意味する。思考活性志向→原田ら(2019)の価値の認知の想定より引用、「現象の規則性や法則の理解が深まること」「自分の予想と違った結果になったとき、その理由を考えること」という深い学習指向を意味する。

 

これらが示唆するのは、例え興味関心を燻る課題を提供したとしても、その分野における自己効力感がない限り深い学習に結び付かないこと。自律的で深い学習を促すためには、まず当人の自己効力感を育てる必要があること。自己決定理論の有能感充足のお話(清水 2019など)と一致する。

同時に、自己効力感と一時の興味関心が高くても、深い学習指向に結び付くような体験がない場合、一時の感情は燻ったままであることを示唆している。

自己効力感と思考活性志向がともに低いときに見られる、ポジティブ感情と問題解決方略の正の相関について。「できそうだから、楽しそうだからやる」という浅いながらも促進された動機付けを反映している可能性がある。

 

日本における期待価値理論のお話、理科を題材としたものが多い気がする。教科が変われば強度も変動するのか?

 

 

参考文献

原田 勇希, 草場 実, 観察・実験に対する興味と自己効力感が学習方略の使用傾向に及ぼす相乗効果, 理科教育学研究, 2021, 62 巻, 1 号, p. 309-321,