「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{41}Kou Murayama, Lily FitzGibbon & Michiko Sakaki. 2019

俗にいう知的好奇心(特殊的探索)を、自律的な知識獲得プロセスのための報酬学習フレームワークとして解釈、これを提示する。

知識の獲得が報酬としてはたらき、「獲得できる知識がどれだけのものか、楽しみ」という期待が探索の要因であると仮定。知識のギャップを認知したとき、知識の獲得という報酬を期待し探索を開始する。探索の結果獲得された知識は、「ギャップをどれだけ埋めてくれたか」「それが対象にとって価値ある気づきだったか」「対象の既存の知識とどれぐらい関連しているか」などの基準により選定され、既存の知識ベースに統合される。獲得した知識がより驚きをもたらすものだった場合、より強い報酬感を知覚し、探索の先行要因となる期待を強める。知識の統合により、より高レベルのギャップを認知できるようになり、ここに強まった期待が重なることで、自律的な学習の無限ループが生じる。

このプロセスはいくつかの要因により阻害される。性格特性、誠実性と開放性の低さ。有能感の欲求不満・自己肯定感の低さ。コストが高いとする信念、得るまでに時間がかかりすぎるという信念など。獲得できるだろう知識が感情的に受け付けづらいもの。また、知識獲得に失敗した場合、獲得した知識に目新しさがない場合、先行要因の期待が低下する。これ以上深堀できない、深堀したくないという状態も、該当する。

自律的な知識獲得プロセスには、期待の強さ、知覚された能力、コストなどが無意識的に計算されたのちに、統合され表出すると考えられる。

 

「好奇心とか興味とかは、用いる人によって定義も訳し方も違うからぐちゃぐちゃなんよ。定義を統合するか別の表し方するとかして、なんとかせぇよ」

これに対する1つの案として、要素ではなくプロセスに着目した。これにより、これまで定義が乱立していた好奇心とか興味とかを、ある種包含することができる。

ただし、このプロセスは特殊的探索を想定しており、拡散的探索の説明には向いてない。

 

 

参考文献

Kou Murayama, Lily FitzGibbon & Michiko Sakaki. Process Account of Curiosity and Interest: A Reward-Learning Perspective. Educational Psychology Review volume 31, pages875–895 (2019)