「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{39}Jan Hense PhD & Heinz Mandl PhD. 2014

本論文は、デジタルゲームにおける学習を学習理論・感情理論・動機付け理論の3つの理論的観点から分析。それをもとに、ゲームベースラーニング(GBL)の品質基準として理論的な裏付けを行ったリストを作成している。

 

1:遊びの要素をおろそかにせず、ゲームの学習目標を明確にすること。

2.1:行動主義に則り、

・学習者の行動に対する直接的なフィードバックを提供する。

チュートリアルの提供。

2.2:認知主義に則り、

・問題解決能力を要するコンテンツの導入。

・問題解決に必要な情報をシステム内に埋め込む。

2.3:構成主義に則り、

・プレイヤーにとって身近で現実的な問題を作る。

・あるコンテンツに対する、異なる視点からの観察の機会の提供。

・学習のための社会的背景(バックグラウンド)の作成。

・教育支援の提供。

・プレイヤー自身による知識の構築プロセスの機会の提供。

3.1:プレイヤーの楽しみを保証する。

・魅力的なゲームデザインの提供。

ユーザビリティの最大化。

・イライラや失望を避ける設計。

3.2:学習者の好奇心を喚起する。

・様々な選択肢の提供。

・探索の機会の提供。

3.3:満足感と誇りの保証。

・プレイヤーの成果に対してポジティブなフィードバックを提供する。

・プレイヤーの成果を発表する機会を設ける。

・プレイヤーが失敗してもすぐに復帰でき、かつ失敗しすぎないようにする。

4.1:内発的動機付けの醸成。

・学習と遊びを本質的な魅力とする。

・ポイントや報酬などの外発的報酬にこだわりすぎない。

4.2:有能性について。

・プレイヤーの能力を考慮した、達成が挑戦的かつ現実的な目標の提供。

・プレイヤーに自身の成功を完全にコントロールさせる。また、プレイヤーの成功を偶発的要素に委ねないようにする。

・成功体験の機会を頻繁かつ確実に確保すること。

4.3:自律性について。

・意思決定の権限をプレイヤーに譲渡し、同時にやってはいけないこと、出来ないことを明確に知らせる。

・行動の自由を提供する。

4.4:関連性について。

マルチプレイ、或いはNPCによるゲーム内協力の実現。

・ゲームに関連したプレイヤーのコミュニティを作る。

4.5:興味について。

・ゲームの題材,物語,ジャンルをプレイヤーの興味に合わせて調整する。

・プレイヤーごとに異なる興味に応じた選択肢の提供。

4.6:フロー状態について。

・ゲームの各ステージでの目標を明確に提示する。

・プレイヤーの能力とスキルに合わせた難易度調整。

・ポジティブフィードバックの即時提供。

 

ゲームベースラーニングには、デジタルゲームに組み込まれた動機付け要素の目的と、ゲームベースラーニングの目的の差異による問題が存在している。デジタルゲームはプレイヤーに楽しさを提供することが目的なのに対し、ゲームベースラーニングはプレイヤーの学習や習得を目的としている。両者の目的のずれが、「ゲームを参考にした学習」システムの欠陥の一因となっている。が、今回リスト化した要素の大半は学習とゲームどちらにも通用する事柄である。これらの理論を踏まえ、ゲームと学習を統合すれば、プレイヤーに過剰な苦痛を与えることなく学習を達成できるはずである。

 

 

参考文献

Jan Hense PhD & Heinz Mandl PhD. Learning in or with games? Quality Criteria for Digital Learning Games from the Perspectives of Learning, Emotion, and Motivation Theory. Digital Systems for Open Access to Formal and Informal Learning pp 181–193