「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{13}Kirk Plangger,Colin Campbell, et al. 2022

本研究では、フィットネスをサポートするゲーミフィケーションアプリの利用状況を追跡、報酬の有効性と、身体活動に対する報酬価値・償還・やり込み具合の複合的な影響を分析している。

これは、フィットネスを支援するアプリにおいて報酬が如何様な効果をもたらすのか(H1)、また個々の利用者の状況により報酬がもたらす効果が変化するのか(H2)、を追求するものである。初心者と中級者は報酬のグレードにかかわらず償還の頻度とポイント獲得量は正の相関を持つが、上級者は内発的動機付けと外発的動機付けの混雑が発生し前者とは異なる反応を示す、と推測している。

本研究において。償還とはフィットネスを行うことで得たポイントにて報酬と交換することを指し、報酬の選択肢は複数存在、消費するポイントと報酬のグレードは正の相関にある。やり込み、つまり活動の頻度は、1日の平均獲得ポイント数にて上級者/中級者/初心者を区別している。

方法。ある有名大学に展開されているゲーミフィケーションアプリを分析。ポイント獲得のために特定のタスクをこなす必要はなく、あらゆる身体的活動に基づいて加算される。6か月の間、3502人のユーザーについて、活動休止中および異常値のユーザーアカウントを省いたうえで、獲得ポイント・やり込み・償還回数・報酬のグレードの4つの情報を主に収集。

結果。H1について、獲得ポイントを従属変数とした3(償還回数)×3(やり込み)の参加者間ANOVAを実施。結果、償還回数とやり込みともに獲得ポイントと正の相関を示し、また2変数間に相互作用が確認された。H2について獲得ポイントを従属変数とした、2(報酬グレード)×3(償還回数)×3(やり込み)の参加者間ANOVAを実施。結果、すべての変数が正の相関を示し、また3変数間に相互作用が確認された。初心者の場合、償還回数や報酬グレードにかかわらず、償還を行うこと自体が獲得ポイントと正の相関を持つ。中級車の場合、報酬グレードにかかわらず、償還回数の多さが獲得ポイントと正の相関を持つ。上級者の場合、高い報酬グレードかつ償還回数が多いことが獲得ポイントと正の相関を持つ。

これらの結果は、やり込みによって報酬による動機付けの条件が異なることを示唆している。上級者は報酬という外発的動機付けのほかに、何らかの内発的動機付けを保持している可能性が高く、ゆえにフィットネスに積極的に励み、ポイントも平均以上に獲得でき、グレードの高い報酬と交換できると推測される。

限界事項として、報酬のグレードと償還のパターンを以てして活動パターンを推測しているため期間中のやり込み度合いの変遷など剰余変数が含まれている可能性があること、ユーザーが特定の大学関係者に限られること、自己決定理論を軸として分析したこと、などが挙げられる。

 

 

参考文献

Kirk Plangger, Colin Campbell, Karen Robson, and Matteo Montecchi. Little rewards, big changes: Using exercise analytics to motivate sustainable changes in physical activity. Information & Management Volume 59, Issue 5, July 2022, 103216