「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{12}Zamzami Zainuddin. 2018

本研究は、ゲーミフィケーションを用いた反転学習とそうでない反転学習をそれぞれ用いた教室を比較。自律性・有能性・関連性を基準とした参加者である学生の意欲の傾向を検証した。

現在、反転学習は生徒の意欲関心を向上させる手法として注目を集めているが、学業成績に目立った相違点がないこと、反転学習を生徒が受け入れる保証がないことが問題点として挙げられる。今回は特に、授業外の課題の提出率に焦点を当て、授業外の学習を管理するシステムにゲーミフィケーションを導入し、これの向上を図った。なお、今回のゲーミフィケーションは自己決定理論に則り解釈する。

本研究の目的は 1) 介入過程における生徒の学習成果や達成度を調べること 2) ゲーミフィケーションを取り入れた教育指導における生徒の自律性・有能性・関連性の充足レベルを明らかにすること である。

方法。2つの異なる理科のクラスから選ばれた56名の生徒を対象、27名がゲーミフィケーション入り、29名がゲーミフィケーション無しの条件。どちらも同じ内容、同じ行使で週一回の授業が行われた。ゲーミフィケーション入りの生徒は、授業外にてクイズ形式の課題の参加が求められた。ポイント、バッジ、リーダーボードが導入された。授業は12週間のうち8回行われ、3回のテストを行った。最終週にアンケート調査と、インタビューを行った。インタビューはゲーミフィケーション入り条件から6名が参加した。収集した質的データ(インタビュー)と量的データ(テスト,アンケート)にて分析を行った。

結果。テスト成績について、1回目は両郡に差はみられなかったが、時間経過とともに有意な差が見られるようになった。また、自律性・有能性・関連性の充足は両郡で確認されたが、その度合いに差が見られ、基本的にゲーミフィケーション入り条件のほうが高い数値を記録した。インタビュー結果から、導入されたゲーミフィケーション要素が生徒の動機付けに一助していることが示唆された。インタビューに参加した生徒の一人は、今回の反転学習にて育まれた自律性により、日常生活における学習も捗るようになったと回答している。

結果として、反転学習はそれそのものが強い動機付けをもたらすわけではなく、例えばゲーミフィケーションなどの心理的欲求の充足を担う構造がそれをもたらすことが示唆された

今後は、今回の2群に加え、反転学習を導入していない群を追加し3群間の比較を行うことが望まれる。

 

引用論文

Zamzami Zainuddin.Students' learning performance and perceived motivation in gamified flipped-class instruction. Computers & EducationVolume 126, November 2018, Pages 75-88