第5章
「つまり意識はボンクラなのだ」
ひらめき→どうにも解けなかった問題が、あることに気づき突然解けること。
これは3段階からなる。なかなか解けず、頭を悩ます『行き詰まり』の段階。リフレッシュや思考の転換の意味も込め、別の行為を行いながらも、頭の片隅にタスクをとどめている『あたため』の段階。そして訪れる、状況と認知の結びつき、つまり学習が発生する『ひらめき』の段階。厳密にはこのあと、ひらめきを具現化する『検証』の段階がある。
『行き詰まり』は認知の制約から生じる。これはバイアスやヒューリスティックのような、一種の簡略化のためのものである。思案のために利用できる情報は山ほどあり、そこから連想できる結果も無数にあるが、そんなこといちいち考えていたらきりがないため、ある程度のパターンやフィルターを用意する。
『ひらめき』に到達するには、『行き詰まり』の原因である認知の制約を緩和させれば到達できる。認知の制約の突破には試行錯誤が必須だが、制約を突破した試行の回数、またその試行への評価が、所要時間を短縮させる。で、同じ場所で同じことをし続けて、うんうんうなっているだけだとこれは難しいので、『あたため』が必要となってくる。違う環境にさらすことで、認知心理学における学習の論理上、新しい視点での解釈が可能となる。
また、認知心理学における学習の理論上、対象への積極的な関与が、制約突破のカギにもなる。
なお、試行錯誤のなかで得た知識は、無意識のうちに保全され、回数や評価の分だけ学習される。無意識のうちに私たちは順当に学習するが、それを意識することはできない。「つまり意識はボンクラなのだ」。
また、学習意欲の理論[第一章]と同様、一部は一般化され、ある程度かかわりのある課題に対して、あるいは生活一般について、制約を突破できるボーナスが発生する。これは、制約を突破した試行の回数の増加、またその試行への評価の精度向上、といった形で現れる。言い換えれば、『ひらめき』と『検証』により新しい眼鏡とその扱い方を知った、となる。
ひらめきの検証には、認知的な制約が働きやすいパズル問題が選択されている。例えば「Tパズル」、4つのパーツを組み合わせてTの形を作るというもの。