「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{2}Michael Sailer,Jan Ulrich Hense,Sarah Katharina Mayr and Heinz Mandl. 2017

2017年に発表された論文は、自己決定理論の枠組みを用いゲーミフィケーションの動機付けの仕組みを説明すること、またゲーミフィケーションを実験的に調査しゲーム要素が心理的欲求充足に与える影響を具体的に説明することを目的とした。

仮説を立てる際、ゲーミフィケーションの定義を整理。Werbach(2014)の指摘を踏まえ、ゲーミフィケーションを「ゲームに一般的にみられる要素を用いて、非ゲーム的文脈をよりゲームらしくするプロセス」と定義した。

実験方法はオーダーピッキングのタスクを再現したアプリを開発、これを用いた。対照群と実験群1,2を用意し、参加者をランダムで振り分ける。対照群を含めたすべてのグループにポイントを適応、実験群1にはバッジ,リーダーボード,統計要素を適応、実験群2にはアバター,ストーリー,チームメイトを適応した。ゲーム終了時にアンケートを行い、参加者は心理的欲求充足の度合いを評価した。オンラインで開催され、699人がゲームに参加、うち331人が統計対象となった。

結果、バッジ,リーダーボード,統計要素が有能性充足に正の影響を、アバター,ストーリー,チームメイトが関連性充足に正の影響を与えていた。また、バッジ,リーダーボード,統計要素は自律性充足(タスクの意味付け)に正の影響を与えていたが、アバター,ストーリー,チームメイトは自律性充足(意思決定権の掌握、タスクの意味付け)に影響しなかった。

以上より、バッジ,リーダーボード,統計要素はフィードバック要素として機能し有能性充足をもたらし、アバター,ストーリー,チームメイトが帰属意識を誘発し関連性充足をもたらしているという、これまでの知見(Ryan & Rigby 2011)と一致する結果が得られた

また、バッジ,リーダーボード,統計要素が目標として機能することで自律性充足(タスクの意味付け)をもたらすことが示唆された。

アバター,ストーリー,チームメイトが自律性充足(意思決定権の掌握、タスクの意味付け)をもたらさなかった理由として、暴露量の不足が挙げられる。今回の実験において、ストーリーは短いテキストと画像一枚にて完結していた。

 

引用文献

Michael Sailer,Jan Ulrich Hense,Sarah Katharina Mayr and Heinz Mandl.
How gamification motivates: An experimental study of the effects of specific game design elements on psychological need satisfaction. Computers in Human Behavior Volume 69, April 2017, Pages 371-380